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'''不動産登記'''(ふどうさんとうき)は、[[不動産]]([[土地]]及び[[建物]])の物理的現況と権利関係を[[公示]]するために作られた登記簿に[[登記]]することをいう。土地と建物につきそれぞれ独立した登記簿が存在し(区分所有の例外あり)、登記事項も若干異なる。不動産登記は、[[民法 (日本)|民法]]・[[不動産登記法]]及びその他[[政令]]等によって規律される。不動産登記の事務は、[[登記所]]([[法務局]])において[[登記官]]が行う([[b:不動産登記法第6条|不動産登記法6条]]、[[b:不動産登記法第9条|9条]])。
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<nowiki>'''不動産登記'''(ふどうさんとうき)は、[[不動産]]([[土地]]及び[[建物]])の物理的現況と権利関係を[[公示]]するために作られた登記簿に[[登記]]することをいう。土地と建物につきそれぞれ独立した登記簿が存在し(区分所有の例外あり)、登記事項も若干異なる。不動産登記は、[[民法 (日本)|民法]]・[[不動産登記法]]及びその他[[政令]]等によって規律される。不動産登記の事務は、[[登記所]]([[法務局]])において[[登記官]]が行う([[b:不動産登記法第6条|不動産登記法6条]]、[[b:不動産登記法第9条|9条]])。
  
 
[[立木登記]]など、不動産登記法以外の特別法によって登記される物もある([[立木法]])。
 
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2020年1月8日 (水) 03:54時点における版

'''不動産登記'''(ふどうさんとうき)は、[[不動産]]([[土地]]及び[[建物]])の物理的現況と権利関係を[[公示]]するために作られた登記簿に[[登記]]することをいう。土地と建物につきそれぞれ独立した登記簿が存在し(区分所有の例外あり)、登記事項も若干異なる。不動産登記は、[[民法 (日本)|民法]]・[[不動産登記法]]及びその他[[政令]]等によって規律される。不動産登記の事務は、[[登記所]]([[法務局]])において[[登記官]]が行う([[b:不動産登記法第6条|不動産登記法6条]]、[[b:不動産登記法第9条|9条]])。 [[立木登記]]など、不動産登記法以外の特別法によって登記される物もある([[立木法]])。 == 略語について == 説明の便宜上、次の通り略語を用いる。 ;法 :[[不動産登記法]](平成16年6月18日法律第123号) ;令 :[[不動産登記令]](平成16年12月1日政令第379号) ;規則 :[[不動産登記規則]](平成17年2月18日法務省令第18号) ;準則 :[[不動産登記事務取扱手続準則]]([[2005年]](平成17年)[[2月25日]]民二456号通達) == 不動産登記の沿革 == 不動産登記は、戦前においては、不動産の権利関係のみを公示するものであり、不動産の物理的現況を明らかにするものとしては、[[税務署]]に、課税台帳としての[[土地台帳]]及び[[家屋台帳]]が備えられていた(土地台帳法、家屋台帳法)。しかし、戦後、台帳事務は登記事務と密接な関係があることから、台帳が[[登記所]]に移管された(昭和25年7月31日法律第227号)。 その後しばらく、登記所において、不動産の権利関係を公示する登記制度と、不動産の現状を明らかにする台帳制度が併存することとなったが、登記簿は申請主義が基本であるのに対し、台帳は登記官の職権によって登録することができたから、両者の間に不一致が生じるなどの問題が生じた。 そこで、[[1960年]](昭和35年)、台帳を廃止して、台帳の現に効力を有する事項を登記簿の表題部に移記する一元化を行うこととなり(昭和35年3月31日法律第14号「不動産登記法の一部を改正する等の法律」)、一元化作業は、[[1971年]](昭和46年)[[3月31日]]、全国のすべての登記所について完了した。この結果、登記は「表示の登記」と「権利の登記」の両方を含むこととなった。 なお、移記の終わった台帳は当分の間保存することとされ、現在登記所に保存されている旧土地台帳は、登記簿に記載されている以前の所有者や[[分筆]]の経緯を知るための資料となる。なお、建物の台帳は廃棄された。 == 登記簿 == '''登記簿'''(とうきぼ)とは、不動産に関する権利関係及び物理的現況を記載するために設けられた、[[登記所]]が保管する帳簿をいう。 === ブックシステム === 登記簿は、当初、大福帳式の帳簿であったが、[[1951年]](昭和26年)の旧不動産登記法施行細則<ref>[http://law.e-gov.go.jp/haishi/M32F00501000011.html 旧不動産登記法施行細則](総務省法令データ提供システム・廃止法令)</ref>の改正(昭和26年法務府令)によって、[[1960年]](昭和35年)頃までの間に、登記用紙の加除が自由なバインダー式の帳簿となった。1個の不動産について登記事項を記載した書面を登記用紙といい、これを一定数編綴した帳簿を登記簿といったが、1個の不動産についての登記用紙そのものを登記簿ということもあった。 このような紙製の帳簿による処理を『ブックシステム』という。 [[2008年]](平成20年)現在、日本全国の一般的な土地、建物の登記簿はコンピューターに移行が完了し、ブックシステムの登記簿は閉鎖された。なお、従来通り登記所にて証明書は発行される。 === コンピュータシステム化 === 登記事務の大量・複雑化に対応するため、[[1988年]](昭和63年)、登記事務のコンピュータ・システム化を行うこととする法改正が行われ(昭和63年6月11日法律第81号「不動産登記法及び商業登記法の一部を改正する法律」)、移行作業が完了した登記所について順次[[法務大臣]]が指定を行い、指定された登記所においてコンピュータ・システムによる登記事務を行うこととなった(旧不動産登記法151条ノ2、新不動産登記法附則3条)。[[2008年]](平成20年)現在、日本全国の登記所がコンピュータ化され、移行が適さない登記簿を除き移行作業は完了し、大部分の登記所でオンライン申請ができるようになっている。 コンピュータ・システムにおいては、登記は磁気ディスクに電磁的データで記録することとされている。この電磁的データを登記記録といい、記録媒体である磁気ディスクを登記簿ということとされている([[b:不動産登記法第2条|法2条]]5号、9号)。 ===登記簿の構成=== 登記簿(登記記録)は、'''表題部'''と'''権利部'''に分かれ([[b:不動産登記法第12条|法12条]])、権利部は、所有権に関する登記を行う'''甲区'''と、所有権以外の権利に関する登記を行う'''乙区'''に分かれる([[b:不動産登記規則第4条|規則4条]]4項)。 ==登記の種類== 不動産の登記には、'''表示に関する登記'''と'''権利に関する登記'''とがあり([[b:不動産登記法第2条|2条]]3号、4号)、表示に関する登記は登記簿の表題部に、権利に関する登記は登記簿の権利部に記録される(同条7号、8号)。 ===表示に関する登記=== 表示に関する登記は、不動産の物理的現況を明らかにすることを目的としており、権利に関する登記の前提ともいえる。表示に関する登記には対抗力は認められないが、例外として、借地上の建物([[b:借地借家法第10条|借地借家法10条]])について最高裁判所は対抗力を認めた(最判昭50.2.13)。 [[b:不動産登記法第27条|法27条]]から[[b:不動産登記法第58条|法58条]]までに主要な規定があり、その他の法令・[[通達]]が実務における運用の補強・潤滑化のために規定・発令されている。 登記事項としては、登記年月日等のほか(27条)、土地の場合は「土地の所在」「[[地番]]」「[[地目]]」「[[地積]]」に関して登記がなされ([[b:不動産登記法第34条|法34条]])、建物の場合には「建物の所在」「[[家屋番号]]」「種類」「構造」「床面積」などが登記されている([[b:不動産登記法第44条|法44条]])。これらの異動があったときは、異動があった日から1月以内に申請をしなければならない。 表示に関する登記には、次のようなものがある。 *表題登記 :当該不動産について、表題部に最初にされる登記をいう([[b:不動産登記法第2|法2条]]20号)。建物を新築した場合、登記が存在しないので、[[所有権保存登記]]の前提として建物表題登記の申請がされることになる([[b:不動産登記法第47条|法47条]])。埋立て等によって新たに土地が生じた場合にも土地表題登記がされる([[b:不動産登記法第36条|法36条]])。 *変更登記 :登記事項に変更があった場合にされる登記をいう(法2条15号)。土地の地目・地積に変更があったとき、建物の種類・構造・床面積等に変更があったときは、変更登記がされる([[b:不動産登記法第37条|法37条]]、[[b:不動産登記法第51条|法51条]])。 *更正登記 :登記事項に「錯誤又は遺漏」があった場合に、当該登記事項を訂正する登記をいう(法2条16号)。変更登記が、登記事項が事後的に変動した場合に行われるのに対し、登記事項が当初から誤っていた場合に行われる点で異なる。 :土地の地目・地積等が誤っていたとき、建物の種類・構造・床面積等が誤っていたときは、更正登記がされる([[b:不動産登記法第38条|法38条]]、[[b:不動産登記法第53条|法53条]])。 *滅失登記 :土地又は建物が滅失したときにされる登記をいう([[b:不動産登記法第42条|法42条]]、[[b:不動産登記法第57条|法57条]])。 *[[分筆]]登記、[[合筆]]登記 :土地を分筆・合筆するために行われる登記である([[b:不動産登記法第39条|法39条]])。土地の分筆・合筆は所有者の意思に基づいて行われるものであるから、表題部所有者または登記名義人のみが申請でき、原則として登記官が職権によって登記することはできない。 :地目が相互に異なる土地や、相互に持分を異にする土地について合筆登記を申請することはできない。 *建物分割登記、建物区分登記、建物合併登記([[b:不動産登記法第54条|法54条]]1項1号ないし3号) :附属の建物として登記されている建物を新たな登記記録に記録することを建物分割という。 :建物区分は、一棟の建物の内部に数個の[[建物の区分所有等に関する法律|区分建物]]としての要件を満たす建物があるときに、それぞれを区分建物の登記記録に記録する登記をいう。一般には、賃貸用のマンションを、分譲用のマンションに登記したいときに行う。 :建物合併とは、主たる建物とその附属の建物の関係にある建物を1登記記録に記録することをいう。 :これらは、所有者の意思によって登記される。 *建物合体登記([[b:不動産登記法第49条|法49条]]) ===権利に関する登記=== 権利に関する登記は、不動産についての権利の保存、設定、移転、変更、処分の制限又は消滅を公示するための登記である([[b:不動産登記法第2|法2条]]4号、[[b:不動産登記法第3条|法3条]])。 権利に関する登記は第三者[[対抗要件]]である([[b:民法第177条|民法177条]])。不動産についての権利の優先関係が問題となるときは、登記の有無、先後が基準となる。一般に登記といえば、権利に関する登記のことをいうことが多い。 [[b:不動産登記法第59条|法59条]]から[[b:不動産登記法第118条|法118条]]に主要な規定があり、各種法令・[[通達]]が実務のため規定・発令されている。 登記事項には、登記の目的、受付年月日・受付番号、登記原因及びその日付、権利者の住所・氏名等がある(法59条)。 ====所有権に関する登記==== 権利に関する登記のうち、所有権に関する登記は、権利部の甲区に記録される([[b:不動産登記規則第4条|規則4条]]4項)。所有権に関する登記には、次のようなものがある。 *[[所有権保存登記]] :新築などで、初めて甲区に記録される場合に、[[所有権保存登記]]がされる。 :登記の目的に「所有権保存」と記録され、所有者の住所・氏名が記録される。登記原因及びその日付は登記されない([[b:不動産登記法第76条|法76条]]1項)。 :所有権保存登記の申請をすることができる者は、以下の者に限定されている([[b:不動産登記法第74条|法74条]])。 #表題部所有者またはその相続人その他の一般承継人。 #所有権を有することが確定判決によって確認された者。 #収用により所有権を取得した者。 #区分建物の場合で、表題部所有者から所有権を所得した者。なお、その建物が敷地権付き区分建物の場合、敷地権の登記名義人の承諾が必要。 *[[所有権移転登記]] :所有権保存登記又は前の[[所有権移転登記]]の名義人から所有権の移転を受ける場合にされる。 :登記の目的には「所有権移転」と、登記原因及びその日付には「平成○年○月○日売買(又は贈与、相続等)」と記録され、権利者として新しい所有者の住所・氏名が記録される。 *処分の制限の登記 :[[差押え]]、[[仮差押え]]及び[[仮処分|処分禁止]]の登記が具体例である。これらの登記はすべて嘱託でされ、申請をすることはできない([[b:民事執行法第48条|民事執行法48条]]1項、[[s:民事保全法#47|民事保全法47条]]3項・[[s:民事保全法#53|53条]]3項、[[b:不動産登記法第16条|法16条]]1項)。 登記されている所有権の登記事項に変更等があったときは、次のような登記がされる。 *[[変更登記 (権利に関する登記)#所有権の変更登記|変更登記]] :既存の登記の権利の内容が変更されたとき([[共有物分割]]禁止の定めなど)や、登記名義人の表示が変更されたとき(改姓、住所移転、行政区画の変更等)には、変更登記がされる([[b:不動産登記法第2条|法2条]]15号)。 *[[更正登記]] :登記事項に誤りがあった場合には、更正登記がされる(法2条16号、[[b:不動産登記法第67条|法67条]])。 *[[抹消登記]] :既存の登記の権利が最初から存在しなかったか、事後的に消滅した場合には、抹消登記がされる([[b:不動産登記法第68条|法68条]]、[[b:不動産登記法第69条|法69条]])。 *[[回復登記]] :誤って抹消登記をした場合に、もとの順位で復活させる登記である([[b:不動産登記法第72条|法72条]])。なお、不動産登記法附則3条1項の指定を受けていない登記所(コンピューター化未移行庁)において旧登記簿が火災等により滅失したため登記がない状態になった場合、旧不動産登記法19条・23条及び69条ないし75条に規定される滅失回復登記がされる([[s:不動産登記規則#f6|規則附則6条]]1項)。 ====所有権以外の権利に関する登記==== 権利に関する登記のうち、所有権以外の権利に関する登記は、権利部の乙区に記録される([[b:不動産登記規則第4条|規則4条]]4項)。所有権以外の権利で登記されるのは、[[用益物権]]([[地上権]]、[[永小作権]]、[[地役権]])、[[担保物権]]([[先取特権]]、[[質権]]、[[抵当権]])、[[賃借権]]、[[採石権]]である([[b:不動産登記法第3条|法3条]])。甲区のない登記簿に乙区のみを登記することはできない。 *[[抵当権設定登記]] :甲区の所有者が[[抵当権]]を設定したときにされる。 :登記の目的には「抵当権設定」、登記原因及びその日付には「平成○年○月○日金銭消費貸借同日設定」などと記録され、抵当権者の住所・氏名のほか、債権額、債務者の住所・氏名等が記録される([[b:不動産登記法第83条|法83条]]、[[b:不動産登記法第88条|法88条]])。 *[[登記名義人表示変更登記]] :名義人の氏名・名称・住所について変更があった場合になされる。 *[[抵当権変更登記]] :抵当権の登記事項に変更があった場合にする。 *[[抵当権移転登記]] :抵当権者が抵当権を譲渡したときにされる。既に存在する抵当権設定登記に対する付記登記として登記される([[b:不動産登記法第4条|法4条]]2項)。 *[[抵当権の処分の登記]] :抵当権の処分([[b:民法第376条|民法376条]])があった場合にする。 *[[順位変更登記]] :登記された担保物権の順位を変更する場合にする。 *[[根抵当権設定登記]] :当事者が根抵当権を設定した場合にする。 *[[根抵当権変更登記]] :根抵当権の登記事項に変更があった場合にする。 *[[根抵当権の処分の登記]] :根抵当権につき根抵当権の処分・譲渡・分割譲渡・一部譲渡・共有者の権利移転があった場合にする。 *[[民法第398条の14第1項ただし書の定めの登記]] :根抵当権の準共有者が、弁済を受ける割合や、優先弁済を定めた場合にする。 *[[根抵当権移転登記]] :根抵当権の承継があった場合にする。 *[[買戻しに関する登記]] :売買契約と同時に買戻特約を設定したときにされる。買戻しの登記は、売買による所有権移転登記申請と「同時に」する必要がある(大判明33.10.5)。 *[[地上権設定登記]] :甲区の所有者が[[地上権]]を設定したときにされる。地上権者の住所・氏名のほか、地上権設定の目的、地代、支払時期、存続期間等が登記される([[b:不動産登記法第78条|法78条]])。 *[[地役権設定登記]] :当事者が[[地役権]]を設定した場合にする。 *[[賃借権設定登記]] :甲区の所有者が[[賃借権]]を設定したときにされる。賃借権者(賃借人)の住所・氏名のほか、賃料、支払時期、存続期間等が登記される([[b:不動産登記法第81条|法81条]])。賃借権は[[債権]]であるが、登記したときは対抗力を持つ([[b:民法第605条|民法605条]])。 *[[民法第387条第1項の同意の登記]] :先順位の抵当権に賃借権を対抗させる場合にする。 これらの権利の変更、消滅等が生じたときは、所有権に関する登記と同様、変更登記、更正登記、抹消登記、回復登記がされる。 *[[変更登記 (権利に関する登記)]] :登記事項に変更があった場合にする。 *[[移転登記 (不動産登記)]] :権利の承継があった場合にする。 *[[抹消登記]] :権利や登記事項が消滅したか不存在だった場合する場合にする。 ===仮登記=== 本登記を申請する要件が調わないとき、具体的には *登記の申請に必要な情報を登記所に提出することができないとき *権利の変動の請求権を保全しようとするとき に、順位を確保するために行われる登記を指す。仮登記自体に対抗力はないが、後に本登記を行うことで、仮登記の順位で本登記が行われたことになる。 ===付記登記=== 権利に関する登記のうち、既にされた権利に関する登記についてする登記であって、当該既にされた権利に関する登記を変更し、若しくは更正し、又は所有権以外の権利にあってはこれを移転し、若しくはこれを目的とする権利の保存等をするもので当該'''既にされた権利に関する登記と一体のものとして'''公示する必要があるものをいう([[b:不動産登記法第4条]])。 登記の順位は原則として登記申請受付の時間的前後によって決まるが、付記登記では既存の登記と一体のものとして、当該既存の登記と同じ順位で公示される。例として、代位の付記登記([[b:民法第501条|民法501条]])等がある。 ==登記手続== 登記は、当事者の申請又は官庁・公署の嘱託([[b:不動産登記法第116条|法116条]])に基づいて、[[登記官]]が登記簿に登記事項を記録することによって行う([[b:不動産登記法第11条|法11条]]、[[b:不動産登記法第16条|法16条]]1項)。 不動産が2以上の登記所の管轄区域にまたがる場合、法務省令で定めるところにより、法務大臣または法務局もしくは地方法務局の長が、当該不動産に関する登記の事務を司る登記所を指定する([[b:不動産登記法第6条|法6条]]2項)。そして、登記の申請を当該2以上の登記所のうち、1の登記所にすることができるのは、登記事務を司る登記所の指定がされるまでの間に限られる(法6条3項)。 ===申請=== ====概要==== 表示に関する登記は、登記名義人からの単独申請による。表示に関する登記は、登記官が職権で(所有者等の申請がなくても)することができる([[b:不動産登記法第28条|法28条]])。以下の者には申請義務が課せられている。 *土地・建物の表題部の登記は、所有者 *土地・建物の表題部の変更の登記は、表題部に記載された所有者または所有権の登記名義人 *土地・建物の滅失の登記は、滅失の日から1月以内に、表題部に記載された所有者または所有権の登記名義人 権利に関する登記は、'''登記権利者'''と'''登記義務者'''が共同して申請するのが原則である(共同申請の原則、[[b:不動産登記法第60条|法60条]])。どのような場合に登記権利者が登記義務者に登記手続への協力を求めることができるかは[[登記請求権]]の項参照。以下の場合には、単独で申請することができる。 *[[相続]]又は[[法人]]の[[合併 (企業)|合併]]による権利の移転の登記([[b:不動産登記法第63条|法63条]]2項) *[[所有権保存登記]]([[b:不動産登記法第74条|法74条]])及びその抹消登記([[b:不動産登記法第77条|法77条]]) *[[登記名義人表示変更登記|登記名義人表示変更・更正登記]]([[b:不動産登記法第64条|法64条]]1項) *[[抵当証券]]が発行されている[[抵当権]]についての債務者の表示変更・更正登記(64条2項) *[[信託]]登記の一部([[b:不動産登記法第98条|法98条]]3項、[[b:不動産登記法第100条|法100条]]) *[[確定判決]]による登記([[b:不動産登記法第63条|法63条]]1項) *:ここでいう「確定判決」とは、給付判決を指し、確認判決を含まない。 *[[収用]]による[[所有権移転登記]]([[b:不動産登記法第118条|法118条]]1項) *人の死亡又は[[法人]]の解散による権利[[抹消登記]]([[b:不動産登記法第69条|法69条]]) *登記義務者の所在が知れない場合の権利抹消登記([[b:不動産登記法第70条|法70条]]2項) *[[仮処分]]の登記に遅れる登記の抹消登記([[b:不動産登記法第111条|法111条]]1項・2項、[[b:不動産登記法第113条|113条]]) *[[根抵当権]]の[[根抵当権#根抵当権の確定|元本確定]]登記で一定の場合([[b:不動産登記法第93条|法93条]]) *[[仮登記]]のうち一定の場合([[b:不動産登記法第107条|法107条]]1項、[[b:不動産登記法第110条|法110条]]) *:仮登記義務者の承諾を得たとき、または仮登記を命ずる裁判所の処分があるとき、等。 *[[採石法]]12条又は15条1項の決定に基づく[[採石権]]等に関する登記(採石法31条) 要式性が極めて厳格であるため、各専門家(表示に関する登記は[[土地家屋調査士]]、権利に関する登記は[[司法書士]])に依頼し登記手続きを行うのが一般的である(1年の権利に関する登記申請のうち95・8%程度が司法書士によって行なわれているとの[[2004年]](平成16年)[[5月11日]]衆院法務委員会法務省政府答弁がある)。なお、登記権利者と登記義務者が1人の司法書士に委任することは[[双方代理]]([[b:民法第108条|民法108条]])に反しないとされる(最判 昭和43年3月8日[[民集]]22巻3号540頁)。 ====登記権利者と登記義務者==== *概要 :登記権利者とは、権利に関する登記をすることにより、登記上'''直接に'''利益を受ける者をいい、間接に利益を受ける者を除く([[b:不動産登記法第2条|法2条]]12号)。 :登記義務者とは、権利に関する登記をすることにより、登記上'''直接に'''不利益を受ける登記名義人をいい、間接に不利益を受ける登記名義人を除く(法2条13号)。 *具体例 :売買による[[所有権移転登記]]の場合、買主が登記権利者、売主(現所有権登記名義人)が登記義務者となる。抵当権設定登記の場合、抵当権者が登記権利者、抵当権設定者(不動産の所有権登記名義人など)が登記義務者となる(ただし、登記申請情報には「抵当権者」「設定者」と記載するのが実務の慣行である)。 :注意しなければならないのは、登記手続上(不動産登記法上)の登記権利者・登記義務者と、[[実体法]]上の登記権利者・登記義務者とは異なることがあるということである。たとえば、AからBに対する仮装の売買で登記をしようとする場合は、実体法上はBはAに対する[[登記請求権]]がなく、A・Bは登記義務者・登記権利者ではないが、登記手続上は、Aを登記義務者、Bを登記権利者として扱う。すなわち、登記手続上、登記権利者・登記義務者に当たるかは、実質で判断するのではなく、形式的に判断することとなる。 *直接と間接 :例えば、1番[[抵当権]]の債権額を減額する[[抵当権変更登記]]のときの2番抵当権者は、間接には利益を受けても直接に利益を受ける者ではない。直接に利益を受けるのは、あくまで1番抵当権の設定者である。また、1番抵当権の債権額を増額する抵当権変更登記のときの2番抵当権者は、間接には不利益を受けても直接には不利益を受ける者ではない。直接に不利益を受けるのは、あくまで1番抵当権の設定者である。ただし、当該2番抵当権者は登記上の利害関係人となり、1番抵当権の債権額を増額する変更登記を付記登記でするには2番抵当権者の[[承諾証明情報]]が必要となる([[b:不動産登記法第66条|法66条]]、[[s:不動産登記令#b25|令別表25項]]添付情報ロ)。この承諾情報を提供しないと、当該変更登記は主登記で実行され、2番抵当権者に債権額増額を対抗できなくなってしまう([[b:不動産登記法第4条|法4条]]2項参照)。 ====申請情報と添付情報==== 登記を申請するためには、登記所に登記申請情報と添付情報(以下に挙げたのは主なもの)を提供する必要がある。 *登記申請情報([[b:不動産登記法第18条|法18条]]、[[b:不動産登記令第3条|令3条]]) :新不動産登記法においては、登記申請情報をオンラインで登記所に送信することによって申請をすることができるようになった(法18条1号)。これは[[法務大臣]]がオンライン庁として指定した登記所についてのみ可能である([[s:不動産登記法#f6|法附則6条]]1項)。[[2008年]](平成20年)[[7月14日]]、すべての登記所が指定された<ref>法務局 「[http://www.moj.go.jp/MINJI/minji72.html#02 電子申請対象登記所] 」 [http://www.moj.go.jp/ 法務省]</ref>。これにより、当事者が登記所の窓口に出向いて申請する必要がなくなった(当事者出頭主義の廃止、書面申請主義の廃止)。なお、従来どおり、書面(登記申請書)を提出して申請することも可能である(法18条2号)。 *登記識別情報ないし登記済証 :共同して権利に関する登記を申請する場合や、合筆登記等を申請する場合には、現在の登記名義人の[[登記識別情報]]を提供しなければならない([[b:不動産登記法第22条|法22条]]、[[b:不動産登記令第8条|令8条]])。この登記識別情報とは、登記名義人が前に登記を受けたときに登記所から通知される暗証番号である([[b:不動産登記法第2条|法2条]]14号、[[b:不動産登記法第21条|法21条]])。しかし、オンライン庁の指定を受けた登記所であっても、従前の[[登記済証]](いわゆる権利証)が無効になったわけではなく、登記済証が存在するときはその登記済証を提出することとなる([[s:不動産登記法#f7|法附則7条」]])。 :登記識別情報も、登記済証も、申請者が登記名義人本人であることを証明する本人確認手段といえる。本人確認等の方法が充実したため、保証書による本人確認の制度は法改正により廃止された。 *登記原因証明情報 :権利に関する登記を申請する場合には、[[登記原因証明情報]](登記原因証書)を提供しなければならない([[b:不動産登記法第61条|法61条]])。 :売買、贈与、抵当権設定等の契約書がこれに当たるが、契約を口頭で締結したなどの場合、別途登記原因証明情報(法務局、登記申請書の様式、別紙3参照)を作成し提供してもよい。また、[[確定判決]]によって登記するときは、判決正本が登記原因証書に当たる([[b:不動産登記第令7条|令7条]]1項5号ロ(1))。住所、氏名の変更登記では、住民票、戸籍謄本等が登記原因証明情報となる。 :同一の登記所の管轄区域内にある2以上の不動産について申請する登記原因・登記目的及びその日付が同一である場合には、1つの申請情報で一括申請ができる。 :これらの情報は登記所に備え付けられる。 *[[電子証明書]]ないし印鑑証明書 :オンライン申請の場合は、登記申請情報及び添付情報には[[電子署名]]を行い、[[電子証明書]]を送信する必要がある([[b:不動産登記令第12条|令12条]]、[[b:不動産登記令第14条|14条]])。 :書面による申請の場合は、法務省令で定める場合([[b:不動産登記規則第47条|規則47条]]ないし[[b:不動産登記規則第49条|49条]])を除き、本人による申請の場合には登記申請書に、代理人による申請の場合には委任状に、[[実印]]で押印した上、3か月以内の[[印鑑登録|印鑑証明書]]を添付しなければならない([[b:不動産登記令第16条|令16条]]、[[b:不動産登記令第18条|18条]])。 ====登録免許税==== 登記の申請に当たっては、[[登録免許税]]を納付しなければならない。 =====額の算出===== *課税標準額 :不動産の価額・債権金額・極度金額などを課税標準とする場合、その金額が1,000円に満たないときは1,000円とし(登録免許税法15条)、1,000円未満の端数があるときは切り捨てる([[国税通則法]]118条1項)。 *登録免許税 :実際の申請で、税率を調査するには、必ず登録免許税法と租税特別措置法を参照しなければならない。 :課税標準額に税率(登録免許税法別表1参照)を乗じて計算した金額が1,000円に満たないときは1,000円とし(登録免許税法19条)、100円未満の端数があるときは切り捨てる([[国税通則法]]119条1項)。 *不動産の価格 :'''登記'''の時における価額である(登録免許税法10条前段)。契約締結時や相続開始時などではない。この価額は[[地方税法]]341条9号に掲げる[[固定資産課税台帳]]に登録された当該不動産の価格である(登録免許税法附則7条)。売買代金などではない。この価格は以下のように分類される。 :*登記申請日が1月1日から3月31日までの場合、前年の12月31日の価格(登録免許税法施行令附則3項1号)。 :*登記申請日が4月1日から12月31日までの場合、その年の1月1日の価格(同令附則3項2号)。 :*固定資産課税台帳に登録された価格のない不動産の場合、当該不動産に近接類似する不動産の価格を基礎として登記機関が認定した価額(同令附則3項本文)。 *持分の場合 :不動産の[[所有権]]又は所有権以外の権利の一部である持分を課税標準とする場合、不動産の価額や債権金額などに当該持分の割合を乗じて計算した金額である(登録免許税法10条2項・3項)。 *非課税及び減税 :国など、非課税となる法人及びその要件が定められている(登録免許税法4条及び同別表2・3並びに登録免許税法施行規則2条ないし10条など)。 :'''表示に関する登記'''は申請義務が課せられているため非課税である。また、一定の要件の基に非課税となる登記の種類が定められている(同法5条・同令2条・同規則1条など)。これらの免除措置を受けた場合、登録免許税額に代えて免除の根拠となる法令条項を申請情報の内容としなければならない([[不動産登記規則]]189条2項)。 :居住用家屋の[[所有権保存登記]]など、様々な場面で減税措置が採られている。その具体的場面及び要件については、登録免許税法のほか[[租税特別措置法]]・租税特別措置法施行令・租税特別措置法施行規則などに規定がある。これらの軽減措置を受けた場合、登録免許税額と共に軽減の根拠となる法令条項を申請情報の内容としなければならない(不動産登記規則189条3項)。 =====納付===== *書面申請の場合の納付方法 :まず国に納付し、当該納付に係る領収証書を申請書にはり付けて提出する現金納付による方法(登録免許税法21条)が原則であるが、政令で定める場合(登録免許税法施行令29条)など一定の場合には[[収入印紙]]を申請書にはり付けて提出する方法も認められている(同法22条)。書面申請ではほとんど全部収入印紙を貼付しています。 *電子申請の場合の納付方法 :書面申請の場合の納付方法のほか、財務省令(登録免許税法施行規則23条1項)で定める方法により納付することができる(登録免許税法24条の2第1項)。具体的には、歳入金電子納付システム<ref>法務省 「[http://shinsei.moj.go.jp/faq/faq_003_01.html オンライン申請システム、登録免許税の支払い方法] 」 [http://www.moj.go.jp/ 法務省]</ref>を利用する方法である。 *納税者 :登記を受ける者に納税義務がある(登録免許税法3条前段)。登記を受ける者が数名あるときは、連帯して納税する義務を負う(同法3条後段)。 *未納付 :登録免許税の全部又は一部を納付しなければ、申請却下事由に該当する([[b:不動産登記法第25条|25条]]12号)。登記機関が登録免許税の納付期限後に未納付の事実を知った場合、遅滞なく当該登記を受けた者の登録免許税の納付地(登録免許税法8条2項)の所轄[[税務署長]]にその旨及び財務省令で定める事項(登録免許税法施行規則26条)を通知しなければならない(登録免許税法28条、不動産登記準則127条1項・同別記91号様式)。通知を受けた税務署長は、当該通知に係る登録免許税の未納分を当該通知に係る登記を受けた者から徴収する(登録免許税法29条1項)。また、税務署長は未納の事実を知った場合、通知を受けていなくても徴収することができる(同法29条2項)。 *納税不足額通知書の様式 :[[画像:不動産登記-納税不足額通知書.PNG]] =====還付===== *過誤納 :登録免許税を過大に納付するなど一定の場合には還付される。還付事由で法定されている場合とは、1.申請が却下されたとき、2.申請の取下げがあったとき(再使用証明をする場合を除く)、3.過大に登録免許税を納付して登記を受けたとき、である(登録免許税法31条1項各号)。 *方法 :登記機関が還付事由に該当することを知ったときは、遅滞なく当該登記を受けた者の登録免許税の納付地(登録免許税法8条2項)の所轄[[税務署長]]にその旨及び財務省令で定める事項(登録免許税法施行令31条1項)を通知しなければならない(登録免許税法31条1項本文、不動産登記準則128条1項・同別記93号様式)。また、登記を受けた者は、申請書に記載した課税標準又は税額の計算に誤りがあったなどの理由で登録免許税の過誤納があった場合、その旨を登記機関に申し出て登録免許税法31条1項の通知をすべき旨の請求をすることができる(登録免許税法31条2項及び登録免許税法施行令31条2項、同法31条6項・7項及び同令3項・4項)。 :税務署長等は還付金等があるときは、遅滞なく金銭で還付しなければならない([[国税通則法]]56条1項)。[[銀行]]口座等への振込みによってするのが実務の慣行である(不動産登記準則別記93号様式参照)。 *先例 :[[所有権]]に関してされた二重登記の一方を申請又は職権で抹消した場合、その抹消に係る登記について納付した登録免許税は還付される([[1964年]](昭和39年)[[1月13日]] 民甲37号通達、[[1968年]](昭和43年)[[3月13日]] 民甲398号回答)。 :登記完了後に非課税又は減税に係る証明書類を提出して、登録免許税の全部又は一部の還付を請求することは許されない([[1966年]](昭和41年)[[7月22日]] 民甲2121号通達)。 *還付通知書の様式 :[[画像:不動産登記-還付通知書.PNG]] =====再使用証明===== *概要 :登記機関は、登記を受ける者から申請の取下げに併せて申請書にはり付けられた領収証書又は印紙で使用済みの旨の記載又は消印がされたものについて再使用することができる証明をすることができる(登録免許税法31条3項前段)。 *方法 :請求は再使用証明申出書を提出してする(登録免許税法施行令32条1項、不動産登記準則129条1項・同別記94号様式)。この書類の提出があった場合、登記機関は原則として再使用できる旨の証明をしなければならない(登録免許税法施行令32条2項、不動産登記準則129条2項・3項及び同別記95号様式)。再使用証明された領収証書又は印紙は、取下げの日から1年以内に限り再使用することができる(登録免許税法31条3項前段)。 :再使用証明された領収証書又は印紙を使用しなくなった場合、当該証明のあった日から1年を経過した日までに、当該証明を無効にして登録免許税の還付を受けたい旨の申出をすることができる(登録免許税法31条5項、登録免許税法施行令32条3項、不動産登記準則130条)。 *実例 :再使用証明された領収証書又は印紙は、当該再使用証明をした登記所でしか使用できない(登記研究321-71頁、登録免許税法31条3項)。 :不動産登記の申請を取下げて再使用証明を受けた領収証書又は印紙は、[[商業登記]]の申請書に添付して使用できる(登記研究393-87頁)。 *再使用証明申出書の様式 :[[画像:不動産登記-再使用証明申出書.PNG]] *再使用証明印の様式 :[[画像:不動産登記-再使用証明印.PNG]] ===受付・調査=== 登記の申請があったときは、登記官はこれを受け付け、受付番号を付す([[b:不動産登記法第19条|法19条]]、[[b:不動産登記規則第56条|規則56条]])。 登記官は、権利に関する登記の実体については形式的審査権しかないとされ、登記簿及び提供された情報(書面)のみをもとに、[[b:不動産登記法第25条|法25条]]各号(11号以外)の却下事由に当たるか否かを審査し、それ以上、真実そのような[[物権変動]]が生じたか否かまで審査することなく、登記を行う。 ただし申請人については、登記官が申請人となるべき者以外の者が申請していると疑うに足りる相当な理由があると認めるときは、申請人の申請の権限の有無を調査しなければならない([[b:不動産登記法第24条|法24条]]、[[b:不動産登記規則第59条|規則59条]])。この調査はあくまで申請権限の有無についての調査であり、申請人の申請意思の有無は調査の対象ではない(2005年(平成17年)2月25日民二457号通達第1-1(6))。 これに対し、表示に関する登記については、登記官は実質的審査権を有し、必要に応じて実地調査を行う権限も有している([[b:不動産登記法第25条|法25条]]11号、[[s:不動産登記法#29|法29条]])。 ===記録=== 法25条の却下事由に当たらない場合は、登記官は、申請に基づいて登記簿に記録する。これによって法律上登記が完了する。 登記官は、登記が完了したときは、登記権利者に[[登記識別情報]]を通知する([[b:不動産登記法第21条|法21条]])。 ==登記事項証明書== 登記は、本来は権利関係について一般的に公示されることを目的として、誰でも、[[登記事項証明書]](コンピュータ・システム上の登記記録を'''書面に出力して'''登記官が認証したもの)の交付請求はできるが([[b:不動産登記法第119条|119条]])、近時、不動産会社の営利目的による広範な交付請求・情報取得および権利者への営業活動(例:ダイレクトメール・勧誘電話)等、本来の規定趣旨を逸脱した交付請求がみられるようになった。登記簿には権利者等の氏名および住所等個人情報の記載があり、また、認知症等による高齢の権利者の判断力(意思能力)低下とその相続予定者の権利確保の点から、個人情報保護の観点および無権利者による不測の侵害行為の防止から、立ち遅れている交付請求の現状について、当事者としての権利性要件の議論が行われつつある。 登記事項証明書には、登記記録の全部を記載した「全部事項証明書」(旧法の登記簿謄本に対応するもの)と、一部を記載した「一部事項証明書」(旧法の登記簿抄本に対応するもの。現在事項証明書、何区何番事項証明書、所有者証明書などがある)がある。ただし、移記に適さない登記簿などは、旧法21条に従って「登記簿謄本」・「抄本」が交付される(附則3条4項)。コンピューター化された登記簿の登記事項証明書等は、どこの登記所でも日本全国の証明書が取得できる。登記事項証明書の交付を請求するときは、[[収入印紙]]で手数料を納付しなければならない(119条4項)。[[2011年]](平成23年)[[3月31日]]までは収入印紙ではなく[[登記印紙]]だったが、同日で登記印紙は廃止された。既に販売された登記印紙は当面使用可能である。 なお、登記事項証明書はすべて「書面」によって作成され、電磁的記録によって作成された登記事項証明書の交付を請求することはできない。 ==審査請求== [[登記官]]の処分を不当とする者は、審査請求をすることができる([[b:不動産登記法第156条|法156条]]1項)。 ===他の法律との関係=== *登記官の処分については[[b:コンメンタール行政手続法#2|行政手続法2章]]・[[b:コンメンタール行政手続法#3|3章]]の規定は適用されない([[b:不動産登記法第152条|法152条]])。 *登記官の処分に係る審査請求については、[[行政不服審査法]]の一部の規定は適用されない([[b:不動産登記法第158条|法158条]])。 *審査請求ができる場合であっても、審査請求をせずに処分の取消しを求める訴えを提起することができる([[b:行政事件訴訟法第8条|行政事件訴訟法8条]]1項)し、両方を同時に提起してもよい。 *登記官の故意又は過失による処分については、当該処分により損害を被った者は国に賠償を請求できる([[b:国家賠償法第1条|国家賠償法1条]])。 ===請求の対象=== 「登記官の処分」について内容を限定する条文は存在しないことから、不動産登記法に関するすべての行為が含まれる。ただし、登記官が職権で登記を抹消できる場合は限られている([[b:不動産登記法第71条|71条]]1項)ので、それ以外の場合について登記を抹消するよう請求することはできない(最判 昭和37年3月16日民集16巻3号567頁等)。 [[#登録免許税]]について不服がある場合、審査請求は[[国税不服審判所長]]に対してすべきである([[国税通則法]]75条1項5号)。 ===手続=== ====申立て==== *申立先 :当該[[登記官]]の監督法務局又は地方法務局の長である([[b:不動産登記法第156条|法156条]]1項)。申立は登記官を経由してしなければならない(法156条2項)。 *申立ての方式 :原則として書面を提出して行う([[s:行政不服審査法#9|行政不服審査法9条]]1項)が、[[行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律]]3条1項の規定に基づき電子情報処理組織を使用して行うこともできる(同法9条3項)。 *申立期間 :[[b:不動産登記法第158条|法158条]]により[[b:行政不服審査法第14条|行政不服審査法14条]]の適用が除外されている。他に期間を定めた条文はなく、期間に関する制限はない。 :例えば、30年という申請情報等の保存期間([[b:不動産登記規則第28条|規則28条]]10号)を過ぎた後であっても、審査請求をすることができる([[1962年]](昭和37年)[[12月18日]] 民甲3604号回答)。なお、保存期間30年と変更されたのは平成20年で、平成10年以前の申請情報等は廃棄されている場合がある。 ====具体的処理==== *理由がある場合 :[[登記官]]が請求に理由があると認めるときは、相当の処分をしなければならず([[b:不動産登記法第157条|法157条]]1項)、事案の簡単なものを除き、監督法務局又は地方法務局の長に内儀しなければならない([[s:不動産登記事務取扱手続準則#142|準則142条]]1項)。登記官は相当の処分をしたときは、審査請求人に対して当該処分の内容を通知しなければならず([[b:不動産登記規則第186条|規則186条]]、準則142条3項・同別記100号様式)、当該処分の内容を監督法務局又は地方法務局の長に報告しなければならない(準則142条5項・同別記101号様式)。 :監督法務局又は地方法務局の長が請求に理由があると認めるときは、登記官に相当の処分を命じ、その旨を審査請求人その他の利害関係人に通知しなければならない(法157条3項)。 :通知の方法は、[[郵便]]・[[信書便]]その他適宜の方法による([[b:不動産登記規則第188条|規則188条]])。 *理由がない場合 :登記官が請求に理由がないと認めるときは、その請求の日から3日以内に意見を付して監督法務局又は地方法務局の長に送付しなければならない(法157条2項、[[s:不動産登記事務取扱手続準則#143|準則143条]]・同別記102号様式)。 *裁決 :監督法務局又は地方法務局の長が審査請求について裁決したときは、裁決書の謄本を審査請求人及び登記官に交付しなければならない([[s:不動産登記事務取扱手続準則#145|準則145条]]1項)。 ====様式==== *審査請求事件の通知書の様式 :[[画像:審査請求事件通知書.PNG]] *審査請求事件の報告書の様式 :[[画像:審査請求事件報告書.PNG]] *審査請求事件の送付書の様式 :[[画像:審査請求事件送付書.PNG]] ====登記==== 監督法務局又は地方法務局の長は、[[b:不動産登記法第157条|法157条]]3項の処分を命ずる前に[[登記官]]に[[仮登記]]を命ずることができる(法157条条4項)。この仮登記又は法157条3項の命令に基づく登記をするときは、当該命令をした者の職名・命令の年月日・命令によって登記する旨・登記の年月日を記録しなければならない([[b:不動産登記規則第191条|規則191条]])。 ==他の法律の適用除外== *登記簿等及び筆界特定書等については[[行政機関の保有する情報の公開に関する法律]]は適用されない(153条)。 *不動産登記法又は不動産登記法に基づく命令の規定による手続等([[行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律]]2条10号に規定される手続等)については、同法3条ないし6条の規定は適用されない(154条)。 *登記簿等に記載されている保有個人情報([[行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律]]2条3項に規定される保有個人情報)については、同法4章の規定は適用されない(155条)。 ==脚注== {{脚注ヘルプ}} {{reflist}} == 参考文献 == *香川保一編著 『新不動産登記書式解説(一)』 [[テイハン]]、2006年 *「質疑・応答-5092 再使用証明にかかる収入印紙の使用について」『登記研究』321号、帝国判例法規出版社(後のテイハン)、1974年、71頁 *「質疑応答-5830 領収証書等の再使用の可否」『登記研究』393号、テイハン、1980年、87頁 *法務省民事局編『不動産登記実務』法曹会、1997年第5版 *「[http://www.moj.go.jp/MINJI/MINJI79/minji79-02-04.pdf 不動産を売買した場合の申請書の様式(オンライン庁)]」 [http://www.moj.go.jp/ 法務省] [http://www.moj.go.jp/MINJI/index.html 民事局](PDFファイル)  ==関連項目== *[[中間省略登記]] *[[商業登記]] *[[司法書士]] *[[土地家屋調査士]] *[[海事代理士]] *[[地籍調査]] *[[トレンスシステム]]([[コモン・ロー|英米法]]諸国における土地登記制度) ==外部リンク== *[http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxselect.cgi?IDX_OPT=1&H_NAME=%95%73%93%ae%8e%59%93%6f%8b%4c%96%40&H_NAME_YOMI=%82%a0&H_NO_GENGO=H&H_NO_YEAR=&H_NO_TYPE=2&H_NO_NO=&H_FILE_NAME=H16HO123&H_RYAKU=1&H_CTG=1&H_YOMI_GUN=1&H_CTG_GUN=1 不動産登記法](総務省法令データ提供システム) *[http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxselect.cgi?IDX_OPT=1&H_NAME=%95%73%93%ae%8e%59%93%6f%8b%4c%97%df&H_NAME_YOMI=%82%a0&H_NO_GENGO=H&H_NO_YEAR=&H_NO_TYPE=2&H_NO_NO=&H_FILE_NAME=H16SE379&H_RYAKU=1&H_CTG=1&H_YOMI_GUN=1&H_CTG_GUN=1 不動産登記令](総務省法令データ提供システム) *[http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxselect.cgi?IDX_OPT=1&H_NAME=%95%73%93%ae%8e%59%93%6f%8b%4c%8b%4b%91%a5&H_NAME_YOMI=%82%a0&H_NO_GENGO=H&H_NO_YEAR=&H_NO_TYPE=2&H_NO_NO=&H_FILE_NAME=H17F12001000018&H_RYAKU=1&H_CTG=1&H_YOMI_GUN=1&H_CTG_GUN=1 不動産登記規則](総務省法令データ提供システム) *[http://law.e-gov.go.jp/haishi/M32HO024.html 旧不動産登記法](総務省法令データ提供システム・廃止法令) *[http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxselect.cgi?IDX_OPT=1&H_NAME=%93%6f%98%5e%96%c6%8b%96%90%c5&H_NAME_YOMI=%82%a0&H_NO_GENGO=H&H_NO_YEAR=&H_NO_TYPE=2&H_NO_NO=&H_FILE_NAME=S42HO035&H_RYAKU=1&H_CTG=1&H_YOMI_GUN=1&H_CTG_GUN=1 登録免許税法](総務省法令データ提供システム) *[http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxselect.cgi?IDX_OPT=1&H_NAME=%93%6f%98%5e%96%c6%8b%96%90%c5&H_NAME_YOMI=%82%a0&H_NO_GENGO=H&H_NO_YEAR=&H_NO_TYPE=2&H_NO_NO=&H_FILE_NAME=S42SE146&H_RYAKU=1&H_CTG=1&H_YOMI_GUN=1&H_CTG_GUN=1 登録免許税法施行令](総務省法令データ提供システム) *[http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxselect.cgi?IDX_OPT=1&H_NAME=%93%6f%98%5e%96%c6%8b%96%90%c5&H_NAME_YOMI=%82%a0&H_NO_GENGO=H&H_NO_YEAR=&H_NO_TYPE=2&H_NO_NO=&H_FILE_NAME=S42F03401000037&H_RYAKU=1&H_CTG=1&H_YOMI_GUN=1&H_CTG_GUN=1 登録免許税法施規則](総務省法令データ提供システム) {{DEFAULTSORT:ふとうさんとうき}} [[Category:日本の物権法]] [[Category:不動産]] [[Category:登記]]