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'''ミラ'''(Mira)は[[くじら座]]ο星(ο Cet)で、[[赤色巨星]]の代表的なものである。最も有名な[[脈動変光星]]で、ミラ型の代表星である。2.0等と10.1等の間を約332日の周期で変光するが、極大等級も周期も必ず一定になるとは限らない。[[スペクトル分類|スペクトル型]]は極大時には M5e だが、極小時には M9e になる。
 
'''ミラ'''(Mira)は[[くじら座]]ο星(ο Cet)で、[[赤色巨星]]の代表的なものである。最も有名な[[脈動変光星]]で、ミラ型の代表星である。2.0等と10.1等の間を約332日の周期で変光するが、極大等級も周期も必ず一定になるとは限らない。[[スペクトル分類|スペクトル型]]は極大時には M5e だが、極小時には M9e になる。
  
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ミラは[[連星|実視連星]]でもあり、赤色巨星の主星(ミラA)と伴星(ミラB)からなる。ミラBも不規則に明るさを変化させる[[変光星]]であり、変光星名を'''くじら座 VZ'''(VZ Cet)という。ミラBは[[降着円盤]]を伴う[[白色矮星]]だと考えられている。
 
ミラは[[連星|実視連星]]でもあり、赤色巨星の主星(ミラA)と伴星(ミラB)からなる。ミラBも不規則に明るさを変化させる[[変光星]]であり、変光星名を'''くじら座 VZ'''(VZ Cet)という。ミラBは[[降着円盤]]を伴う[[白色矮星]]だと考えられている。
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== ミラに関する年表 ==
 
== ミラに関する年表 ==
*紀元前2世紀:[[カール・マニティウス]]によれば、[[ヒッパルコス]]の 「エウドクソスとアラトスの 『[[ファイノメナ]]』の注解書」 でミラについて言及している条項があるという。
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[[画像:ミラ 2.jpg|thumb|くじら座ο星]]
*紀元前134年頃:ミューラーとハルトヴィッヒによれば、ヒッパルコスはミラについて言及していたという。
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:[[何丙郁]](Ho Peng-Yoke)によれば、この年にヒッパルコスが見た新星([[プリニウス]]の 『[[博物誌]]』 など、通説では[[さそり座]]に出現したとされる)がミラだったと主張している。ただ、この説だと前のマニティウスの主張と矛盾することになる。
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*紀元1世紀:[[ヨハン・バイエル]]によれば、くじら座の 「こぶ」 あるいは 「湾曲部」 に位置する星(ミラのこと)については[[ヒュギヌス]]と無名氏が言及しているという。
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*紀元前後:[[金井三男]]は 『聖書』 に登場する[[ベツレヘムの星]]=ミラ説を主張している。
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*1070年12月25日:何丙郁は、中国の文献に記録されている[[客星]]がミラだったと主張している。
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*1592年11月23日:何丙郁は、韓国の文献に記録されている客星がミラだったと主張している。(何丙郁は日付を「11月28日」と誤っているという)
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*1594年2月20日:何丙郁は、韓国の文献に記録されている客星がミラだったと主張している。
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*[[1596年]][[8月13日]]:[[ダーヴィト・ファブリツィウス]]が[[水星]]の観測中に位置を確認するための星を探していて発見。ファブリツィウスは、この星を25年ほど前に[[カシオペヤ座]]に出現したものと同種の[[新星]]と考えた。
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=== 変光発見前 ===
*[[1603年]]:ヨハン・バイエルがこの年に発行した星図 『[[ウラノメトリア]]』 には、変光しない4等星 「ο」 として記録された。
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* 紀元前2世紀:[[カール・マニティウス]]によれば、[[ヒッパルコス]]の 「エウドクソスとアラトスの 『[[ファイノメナ]]』の注解書」 でミラについて言及している条項があるという。
*[[1609年]][[2月15日]]:ファブリツィウスが再発見。
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* 紀元前134年頃:ミューラーとハルトヴィッヒによれば、ヒッパルコスはミラについて言及していたという。
*[[1638年]]:[[ヨハン・フェレキデス・ホルワルダ]]がο星は新星ではなく周期的に変光する星だと考えた。
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: [[何丙郁]](Ho Peng-Yoke)によれば、この年にヒッパルコスが見た新星([[プリニウス]]の 『[[博物誌]]』 など、通説では[[さそり座]]に出現したとされる)がミラだったと主張している。ただ、この説だと前のマニティウスの主張と矛盾することになる。
*[[1662年]]:[[ヨハネス・ヘヴェリウス]]が 「不思議な星の小史」(''Historiola Mirae Stellae'')という論文を書き、この表題から[[ラテン語]]で 「不思議なもの」 を意味する'''ミラ'''という名前がついた。
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* 紀元1世紀:[[ヨハン・バイエル]]によれば、くじら座の 「こぶ」 あるいは 「湾曲部」 に位置する星(ミラのこと)については[[ヒュギヌス]]と無名氏が言及しているという。
*[[1667年]]:[[イスマイル・ブイヨー]]がミラの変光周期は333日であると発表した。
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* 紀元前後:[[金井三男]]は 『聖書』 に登場する[[ベツレヘムの星]]=ミラ説を主張している。
*1779年:極大時に、[[アルデバラン]]に匹敵する1等級(推定1.2等)に達した。
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* 1070年12月25日:何丙郁は、中国の文献に記録されている[[客星]]がミラだったと主張している。
*1906年12月:極大時に2.1等に達した。([[一戸直蔵]]が記録)
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* 1592年11月23日:何丙郁は、韓国の文献に記録されている客星がミラだったと主張している。(何丙郁は日付を「11月28日」と誤っているという)
*[[2005年]]:[[アメリカ合衆国|アメリカ]]の[[X線]]観測衛星[[チャンドラ (人工衛星)|チャンドラ]](CHANDRA)によってミラが撮影され、ミラAがX線[[アウトバースト]]を起こしていること、ミラAの物質がミラBに吸い寄せられていることが明らかになった。
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* 1594年2月20日:何丙郁は、韓国の文献に記録されている客星がミラだったと主張している。
*2007年2月17日:極大時に1.9等(平均等級では2.05等)に達した。およそ百年ぶりの明るい増光となる。
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*2007年8月15日:付イギリスの科学誌 『[[ネイチャー]]』 によれば、同日 [[アメリカ航空宇宙局|NASA]] の [[GALEX]](Galaxy Evolution Explorer、「銀河進化探査衛星」)がミラの後方に全長約13光年にわたって彗星の尾のような痕が延びていることを発見した。
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=== 変光発見後 ===
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* [[1596年]][[8月13日]]:[[ダーヴィト・ファブリツィウス]]が[[水星]]の観測中に位置を確認するための星を探していて発見。ファブリツィウスは、この星を25年ほど前に[[カシオペヤ座]]に出現したものと同種の[[新星]]と考えた。
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* [[1603年]]:ヨハン・バイエルがこの年に発行した星図 『[[ウラノメトリア]]』 には、変光しない4等星 「ο」 として記録された。
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* [[1609年]][[2月15日]]:ファブリツィウスが再発見。
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* [[1638年]]:[[ヨハン・フェレキデス・ホルワルダ]]がο星は新星ではなく周期的に変光する星だと考えた。
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* [[1662年]]:[[ヨハネス・ヘヴェリウス]]が 「不思議な星の小史」(''Historiola Mirae Stellae'')という論文を書き、この表題から[[ラテン語]]で 「不思議なもの」 を意味する'''ミラ'''という名前がついた。
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* [[1667年]]:[[イスマイル・ブイヨー]]がミラの変光周期は333日であると発表した。
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* 1779年:極大時に、[[アルデバラン]]に匹敵する1等級(推定1.2等)に達した。
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* 1906年12月:極大時に2.1等に達した。([[一戸直蔵]]が記録)
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* [[2005年]]:[[アメリカ合衆国|アメリカ]]の[[X線]]観測衛星[[チャンドラ (人工衛星)|チャンドラ]](CHANDRA)によってミラが撮影され、ミラAがX線[[アウトバースト]]を起こしていること、ミラAの物質がミラBに吸い寄せられていることが明らかになった。
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* 2007年2月17日:極大時に1.9等(平均等級では2.05等)に達した。およそ百年ぶりの明るい増光となる。
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* 2007年8月15日:付イギリスの科学誌 『[[ネイチャー]]』 によれば、同日 [[アメリカ航空宇宙局|NASA]] の [[GALEX]](Galaxy Evolution Explorer、「銀河進化探査衛星」)がミラの後方に全長約13光年にわたって彗星の尾のような痕が延びていることを発見した。
  
 
== [[固有名 (天体)#恒星|固有名]] ==
 
== [[固有名 (天体)#恒星|固有名]] ==
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== 外部リンク ==
 
== 外部リンク ==
*[http://www4.airnet.ne.jp/mira/nhk/mira_campaign/index.html クリスマスにミラを見ようキャンペーン]
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* [http://www4.airnet.ne.jp/mira/nhk/mira_campaign/index.html クリスマスにミラを見ようキャンペーン]
*[http://www.aavso.org/vstar/vsots/1298.shtml Variable Star of the Month December,1998:OMICRON CETI(Mira)]
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* [http://www.aavso.org/charts/CET/OMI_CET/OMICET-A.GIF AAVSOのミラの星図(導入・極大時用)]
*[http://www.aavso.org/charts/CET/OMI_CET/OMICET-A.GIF AAVSOのミラの星図(導入・極大時用)]
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* [http://www.aavso.org/charts/CET/OMI_CET/OMICET-B.GIF AAVSOのミラの星図(極小時用)]
*[http://www.aavso.org/charts/CET/OMI_CET/OMICET-B.GIF AAVSOのミラの星図(極小時用)]
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* [http://www.aavso.org/charts/CET/OMI_CET/OMICET-BR.GIF AAVSOのミラの星図(天頂プリズム使用時用)]
*[http://www.aavso.org/charts/CET/OMI_CET/OMICET-BR.GIF AAVSOのミラの星図(天頂プリズム使用時用)]
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* [http://chandra.harvard.edu/press/05_releases/press_042805.html "Wonderful" Star Reveals its Hot Nature] - CHANDRA HP
*[http://www.aavso.org/vstar/vsots/mirahistory.shtml History of Mira's Discovery](ミラ発見の経緯)
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* [http://www.nasa.gov/mission_pages/galex/galex-20070815.html Speeding-Bullet Star Leaves Enormous Streak Across Sky] - NASA JPL News Releases
*[http://chandra.harvard.edu/press/05_releases/press_042805.html "Wonderful" Star Reveals its Hot Nature] - CHANDRA HP
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* [http://www.nao.ac.jp/nao_topics/data/000324.html 変光星ミラに尾(?)を発見] - 国立天文台 アストロ・トピックス (324)
*[http://www.nasa.gov/mission_pages/galex/galex-20070815.html Speeding-Bullet Star Leaves Enormous Streak Across Sky] - NASA JPL News Releases
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* [http://www.astroarts.co.jp/news/2007/02/23mira/index-j.shtml 記録的に明るい変光星ミラ-変光のしくみと観測の歴史] - AstroArts 天文ニュース
*[http://www.nao.ac.jp/nao_topics/data/000324.html 変光星ミラに尾 (?) を発見] - 国立天文台 アストロ・トピックス (324)
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*[http://www.astroarts.co.jp/news/2007/02/23mira/index-j.shtml 記録的に明るい変光星ミラ-変光のしくみと観測の歴史] - AstroArts 天文ニュース
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2017年5月4日 (木) 17:12時点における最新版

ミラ

ミラ(Mira)はくじら座ο星(ο Cet)で、赤色巨星の代表的なものである。最も有名な脈動変光星で、ミラ型の代表星である。2.0等と10.1等の間を約332日の周期で変光するが、極大等級も周期も必ず一定になるとは限らない。スペクトル型は極大時には M5e だが、極小時には M9e になる。

直径は平均して太陽の440倍あり、光度は極大時には太陽の250倍に達する。距離は100光年、220光年、500光年、820光年などと資料によりまちまちだが、『天文年鑑』2007年版によると400光年、ヒッパルコス衛星年周視差の測定結果から計算すると418光年となっており、ミラの距離は400光年~500光年が有力と考えられる。

ミラは実視連星でもあり、赤色巨星の主星(ミラA)と伴星(ミラB)からなる。ミラBも不規則に明るさを変化させる変光星であり、変光星名をくじら座 VZ(VZ Cet)という。ミラBは降着円盤を伴う白色矮星だと考えられている。

ミラに関する年表[編集]

くじら座ο星

変光発見前[編集]

  • 紀元前2世紀:カール・マニティウスによれば、ヒッパルコスの 「エウドクソスとアラトスの 『ファイノメナ』の注解書」 でミラについて言及している条項があるという。
  • 紀元前134年頃:ミューラーとハルトヴィッヒによれば、ヒッパルコスはミラについて言及していたという。
何丙郁(Ho Peng-Yoke)によれば、この年にヒッパルコスが見た新星(プリニウスの 『博物誌』 など、通説ではさそり座に出現したとされる)がミラだったと主張している。ただ、この説だと前のマニティウスの主張と矛盾することになる。
  • 紀元1世紀:ヨハン・バイエルによれば、くじら座の 「こぶ」 あるいは 「湾曲部」 に位置する星(ミラのこと)についてはヒュギヌスと無名氏が言及しているという。
  • 紀元前後:金井三男は 『聖書』 に登場するベツレヘムの星=ミラ説を主張している。
  • 1070年12月25日:何丙郁は、中国の文献に記録されている客星がミラだったと主張している。
  • 1592年11月23日:何丙郁は、韓国の文献に記録されている客星がミラだったと主張している。(何丙郁は日付を「11月28日」と誤っているという)
  • 1594年2月20日:何丙郁は、韓国の文献に記録されている客星がミラだったと主張している。

変光発見後[編集]

固有名[編集]

ミラは、ファブリツィウスによって発見されて以来、長らく新星と考えられていた(しかしながら、数年後には再発見されていたのであるから、今でいう回帰新星ということになる)。そのため、ロワーエの星図やヘヴェリウスの星表、フラムスティードの星表などではいずれも新星として扱われていた。

18世紀の後半になって、『フラムスティード星図』 のパリ・第2版(1776年)で Variante、同パリ・第3版(1795年)で Changente と記されており、この頃には変光星として認知されていたと考えられる。ミラ(Mira)という固有名は、上記ヘヴェリウスの論文の表題に由来するものであるが、実際に使われたのはボーデによる 『フラムスティード星図』 のベルリン版(1782年)が最初である。

しばしば星座名を伴ってミラ・ケーティー(Mira Ceti、「くじら座の不思議星」)ともいう(以前はよく 「ミラ・ケチ」 と表記された)。類例として、デネブ・キュグニー(はくちょう座α星)、スピカ・ウィルギニス(おとめ座α星)、プロキシマ・ケンタウリ(ケンタウルス座α星C)がある。

また、ミラはよく 「くじら座の心臓」 に当たるといわれるが、別名をコルム・ケーティー(Collum Ceti、ラテン語で 「くじらの頚」 の意)という。ちなみにヘヴェリウスは、星表では Nova in Collo Ceti (くじらの頚にある新星)と記している。

外部リンク[編集]