外国為替証拠金取引

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外国為替証拠金取引がいこくかわせしょうこきんとりひき)とは、少額の証拠金(保証金)を業者に預託し、差益決済による通貨間の売買を行なう取引をいう。「FX」、「通貨証拠金取引」、「外国為替保証金取引」などともいう。

日本では1998年(平成10年)に外国為替及び外国貿易法が改正されてダイワフューチャーズ(現ひまわり証券)などが取り扱いを開始、ブロードバンドの普及も手伝って市場が急速に拡大した。商品先物会社、証券会社のほか、本取引を専業で取り扱う業者もある。取引内容によってはハイリスク・ハイリターンとなるため、外国為替相場に関する十分な知識や経験を要する。

特徴

外貨預金外貨建てMMFなど、他の外貨建て金融商品と比較した場合の特徴を挙げる。

  • 為替レートが同一の時の、売り相場と買い相場(他の外貨商品でいう、電信買相場(TTB)と電信売相場(TTS))の差が小さい。また金利差によるスワップポイントも、他の金融商品より有利な場合が多い。
  • レバレッジをきかせることによって証拠金の何倍もの外貨を取引することができ、レバレッジの倍率を高くするほど為替相場の変動によるリスクは高まる。取引業者によっては100倍以上の高レバレッジが設定可能である。逆に証拠金と同額の外貨を取引する(レバレッジ1倍)という外貨預金に近い比較的低リスクな取引もできる。
    • レバレッジが100倍ということは、1%の変動(1ドル=100円から1ドル=101円)が100%の変動になるということである。利益なら証拠金が2倍になるが損失ならこれだけで全てを失う。
  • 商品先物の証拠金取引と同様、損失が一定額を超えると、ロスカットルールによって強制的に反対売買がなされる。またそれよりも損失の小さい段階で追加証拠金の差し入れを請求される(マージンコール)場合もある。
  • 多くの外貨建て商品では、外貨を買ってから一定期間後に売るという取引になるが、外国為替証拠金取引では逆に外貨を売ってから一定期間後に買い戻すことも可能である(いわゆる「売りから入る」取引)。
  • 日本円(JPYと略する)しか持っていなくても、「米ドル(USD)を売ってユーロ(EUR)を買う」といった取引が可能である。
  • 為替差益は外貨預金が雑所得(総合課税)で外貨MMFが非課税、利子は外貨預金・外貨建てMMFとも利子所得所得税住民税合わせて20%の源泉分離課税)となるが、外国為替証拠金取引は取引方法により2種類の課税方法に分かれる。

ロング・ショート

外国為替証拠金取引では、つねに何らかの通貨を売り、何らかの通貨を買う、という取引をする。これは最初は理解しにくいが、我々が通常日本円でバナナを買うときは、実際にはバナナを買って円を売っているわけである。これと同様に、日本円を売って米ドルを買う、米ドルを買ってユーロを売る、というような取引をしている。

このように、「買い」の方の通貨をロング、「売り」の方の通貨をショート、と呼ぶ。上記の例では順に、ドルロング円ショート(またはドル円ロング)、ユーロショートドルロング(またはユーロドルショート)という言い方になる。また、通貨のペアはUSD/JPY、EUR/JPY、EUR/USDなどと表記が決まっているので、ドル円ロングといえば円はショートされている。同様にユーロドルショートと言えば、ドルはロングされている。ただし同じ取引を、円ドルショート、ドルユーロロングなどという言い方は慣例としてしない。

外国為替証拠金取引では無いが、基本原理の理解の為にレバレッジ取引の例を示す。

例:

レバレッジ20倍の時、5000ドル相当の円を証拠金として預託すると、5000ドル×20倍=10万ドルの取引が可能となる。つまり、証拠金は取引額の5%。

1ドル=120円のときに取引開始して10万ドルを買い、その後、円高となって1ドル=115円になってしまったとする。 このときの収支は、

1ドルあたり115円-120円=-5円であるから、10万ドルでは50万円の損失である。
また、証拠金は1ドル=120円のときに、5000ドルであるから60万円である。
初めの証拠金の60万円に対して50万円の損失を差し引くと、残るのは10万円だけであり、初めの1/6となる。
実際には、途中でマージンコールの発生により追加証拠金の差し入れ(追証)を求められることがある。

上記と逆に、円安となって1ドル=125円になった場合は50万円の利益となる。 つまり、初めの証拠金の60万円が110万円となり、およそ2倍となる。

取り扱い通貨の種類について

近年成長著しい中国の元やインドのルピーについて取り扱っている業者は少なく、扱っていてもスワップ金利が付かない場合や、中にはスワップ金利が売り買い共にマイナスという金利の常識から大きく逸脱したケースが見受けられ、投資家の中からは公正な環境の提示を求める声が強い。一方、上がる可能性が高い案件を皆が購入可能になれば過剰な値上がりや、バブル現象を招く可能性もある。

主なリスク

  • 外国為替相場の変動
相場の変動がある以上、利益が期待できる反面、損失を受ける場合がある。証拠金の何倍もの取引を行うことができるため、損失が預託した証拠金を超え、さらなる証拠金を請求されることもあり得る。
  • 業者に対する信用リスク
客から委託された証拠金を、自社の資産とは別勘定で信託銀行信託するといった保全管理をしていない業者の場合、破綻した際には預託していた証拠金が戻ることは期待できない。業者によって証拠金の管理方法が異なるので約款などで確認する必要がある。
  • マイナススワップポイントのリスク
金利の通貨を売り、低金利通貨を買う取引をする場合(記事執筆の2006年12月現在ではドル売り円買いなど、多くの円買い取引がこれに相当する)、スワップポイントの支払いが必要となる。スワップポイントはその通貨ペアを保有している限りついて回るので、特に長期売買の時にはスワップポイントの収支がバカにならない額になることがある。

FXの不都合な真実「もうかっている人は2割」

一般の主婦の間にも広がり、ドル・円取引で「1ドル当たり原則0.3銭」という低コスト取引を提供する業者まで登場している外国為替証拠金取引(FX)。投資家はさぞかしもうかっているかと思いきや、実はうまく利益をあげている人はせいぜい2割程度。プロの投資家の半分以下というコスト安にめぐまれながら、どうしてそんな結果になるのか。

「この円高でFX投資家の損失が再び膨らんでいるのではないか」。

円が対ドルで約3カ月半ぶりに1ドル=78円台後半に上昇した2012年5月31日東京外国為替市場で、そんな声が聞かれた。後述するように、FX投資家の持ち高は、円売り・外貨買いが円買い・外貨売りを上回っているのが普通。円高が進むと打撃を被りやすい。実は2012年に入ってから4月までは、FX投資家の収支状況が改善しているとされていた。対ドルで一時8円も円安が進み、いったん1ドル=84円台を付ける局面もあったからだ。2012年1月~4月中下旬の損益状況を聞いた大手FX業者外為どっとコムの顧客調査でも、44%の人が「プラス」と答えていた。最近の円高でこの比率が再び低下したのではないかという思いをぬぐえない。というのも、「プラス」とした人のうち最も多かったのは、年初来の収益率がわずか「1~5%」だった人だからだ(その比率は16%)。FXの投資家は、一般の主婦も多いことからミセス・ワタナベの通称で知られる。その華やかなイメージとは裏腹に、「利益をあげているひとはせいぜい2割程度」という話が、かねて業者の間で流れていた。例えば、外為どっとコムが2010年冬にまとめた顧客調査では、2010年1月~11月中下旬の取引でもうかっている人は23%にとどまった。

その前年に当たる2009年については、顧客の損益状況(実現損益ベース)を調べた業界の内部調査資料が存在するのだが、投資家の苦しい状況を示している。業者(79社)に対して、個人向け稼働口座のうち損失が出た口座の比率を聞いたら、「60%以上70%未満」という業者が32%で最多だった。「70%以上80%未満」(25%)、「80%以上90%未満」(4%)、「90%以上100%未満」(1%)も加えると、合計で6割を超えた。評価損益ベースであれば、もっと悪い結果になっていた可能性がある。

話が前後するが、円高が進んでいた2011年8月末には、もっと驚くべき話を聞いたこともあった。

2011年に入ってからの8カ月間で、顧客側の損益がプラスになった日はたった2日しかなかったのだ。「あくまで顧客の損益を合計した数値であって、個別には利益をあげた人もいる。それでも比率にしたら1割くらいかもしれない」と語っていた。

円高基調が続くなら、今年も利益をあげた人の比率はせいぜい2割程度になってしまうかもしれないのである。FXは、個人が一定の証拠金を預ければその最大25倍までの外貨を売買できる金融商品。業者に登録制が導入された2005年以降、イメージが改善して急速に普及した。為替市場でも大きな影響力を持つようになった。しかも、個人がFXでドル・円取引を手掛ける際の売買コスト(スプレッド=買値と売値の差)は、一部業者では原則0.3~0.4銭程度に下がっている。生命保険会社など有力機関投資家や大手自動車会社など輸出入業者が為替取引をする際にも、1銭程度のコストを負担する例が多いだけに、異例の好条件といえる。そうした恵まれた環境下にありながら、もうけている人はかなり少ないのが実情なのだ。なぜこんなことになるのか。投資家の間には、業者が不公正な取引をしており、その犠牲になっているためだという不満を口にする人もいる。具体的に色々なことが言われるが、例えば「ストップ狩り」という手口があるとの噂がかねてある。

ストップ狩りとは、相場を瞬間的に安値に誘導して、顧客のストップロス注文(損失拡大を防ぐため、一定の安値になったら売ることをあらかじめ決めておく注文。後述するロスカットとは別物)を人為的に成立させてしまうというものだ。

FX業者(店頭取引)は、顧客から受けた外貨の売り注文を「カバー先」と呼ばれる銀行につなぎ、その際の価格差で利益を得ることを基本としている。こうしたカバー取引をするのは、手元に多額の外貨を持つと為替変動リスクを抱え込むからだ。そして、ある業者が、普段はカバー先が示す売値(この水準ならFX会社が売れるという価格)より0.5銭(0.005円)ドル安の水準を、顧客向けの売値(この水準なら投資家が売れるという価格)として示していると仮定する。業者の利益は1ドル当たり0.5銭になる。

そして、今カバー先が示すドルの売値が1ドル=80.01円だったとする。普段ならFX会社の顧客向け提示価格は80.005円だが、業者は投資家の多くが80円ちょうどにストップロス注文を出していることに気づいた。その水準までわずか0.005円。そこで一瞬、提示価格を80円に下げてしまうのがストップ狩りだ。

そうするとストップロス注文が成立。投資家はドルを80円で売らざるを得なくなる。業者はそうやって買ったドルをカバー先に持ち込み80.01円で売れば、普段は0.5銭である利益が1銭に膨らむのである。

FX会社は提示価格を自分の判断で決められるし、カバー先の価格と顧客向けの価格の差(利幅)をどの程度にするかも業者側の自由だ。ただ、ストップロス注文がどこにあるのかは業者にわかっているわけで、それを悪用して利益を上げるとしたら、確かに不公正な行為だ。

何人もの業界関係者が異口同音に指摘する構造的な問題がある。それは、前述したようにFX投資家の持ち高が円売り・外貨買いに偏っている点である。

東京金融取引所のFX、くりっく365利用者の日々の持ち高を過去にさかのぼって見ると、例外的な時期はあるものの、基本的に円売り・ドル買いが円買い・ドル売りより多い点が確認できる。一方、2007年に米サブプライムローン問題が表面化して以降、米金利の低下を背景に円高基調が続いてきたわけだから、投資家が損失を被りやすいのは当然だろう。

では、ミセス・ワタナベの間で外貨買いの持ち高が多いのはなぜか。そこにはFXの歴史が関係している。

FXは前述の通り2005年以降、本格的に普及し始めた。この時期は、米国の景気が好調で日米金利差も大きかったため、円安局面だった。従って円売り・外貨買いでもうける人が多かった。「当時は、もうかる人がわずか2割といったことはなかった」と大手業者首脳が振り返る。

だが、その後、米サブプライムローン問題の表面化を受け円高・ドル安が進む。それでも、過去の成功体験を持つFX利用者を中心に外貨買いを好む人が多かった。この結果、FX利用者に関して広まったのが「逆張りを得意とする」というイメージ。実際、円高・ドル安が進む局面でミセス・ワタナベがドル買いを入れる光景が、今でもよく見られる。だが、円高基調が続く中、逆張りで利益を得るのは簡単ではない。円高がさらに進み、損失を抱えるケースが多い。

しかも、FXは用意した証拠金の最大25倍までの外貨を売買できるという特徴がある。少ない元手で多額の売買をできるのは魅力的なので、倍率を上げてしまいがちだ。ところが、倍率を上げれば上げるほど、ロスカット(証拠金の一定割合の評価損をかかえると、自動的に反対売買し損失を確定する機能)が発動しやすくなる。例えば証拠金の半分の評価損でロスカットになると仮定すると、倍率25倍の場合、2%のドル安でロスカットが発動してしまう。逆張りを成功させるためには、相場が反転するまで、損失がある程度膨らんでも取引を続けないといけないのだが、それが難しくなるのだ。

今後も円高基調が続くとすれば、外貨買いだけではなく売りも使う柔軟性や、あまり倍率を引き上げないようにする慎重さなどが、ミセス・ワタナベが勝率を上げるために必要な要素になりそうだ。

ところで、FX投資家が損失を被った裏側で、一体だれが得をしたのか。為替取引は基本的にはゼロ・サムゲーム(ある人の利益は別の人の損失となるゲーム)であるはずだから、だれかが利益を得たはずである。

結論から先に言えば、基本的に利益はFX業者とそのカバー先の金融機関などが手にしたと考えられる。そもそもFXは、あらっぽく言えば、投資家、FX業者そしてカバー先の銀行などの3者間で利益を取り合うゲームだと考えられるからだ。

ある業者の創業以来の累積の利益と顧客の累積の損失を比べたデータによれば、業者側の利益は顧客の損失の半分くらいだった。顧客が被った損失の半分程度の利益が業者側に行き、残りは基本的にはカバー先の金融機関などに行ったということである。

FXが普及する前、一般の個人にとって代表的な外貨運用の手段は、銀行の外貨預金だった。そのコスト(スプレッド)は今でも2円もするケースがある。FXは、こうした外貨運用の高コスト体質に風穴を開けた意味で、ひとつの役割を果たした。ただ、残念ながらそのメリットをうまく生かせるほどには、個人投資家の運用技術は向上していないということだろう。

田中泰輔ドイツ証券チーフ為替ストラテジストは、「2007年以降の円高・ドル安局面で、FX利用者は逆張りのドル買いを積み上げたうえで、たびたびロスカットの円買い・ドル売りを余儀なくされ、円高に拍車をかけてきた」と指摘する。足元で再び円高が進む現在、果たして同様の事態になるのかどうか。同じ展開になるなら、FX利用者の懐が痛むだけでない。輸出の足を引っ張り、日本経済全体にもマイナスの影響を及ぼすことになる。

金融商品販売法の適用

本取引は、2004年4月1日施行の「金融商品の販売等に関する法律」(「金融商品販売法」)の改正により、「直物為替先渡取引」に該当することが明確になった。(金融商品販売法 第2条1項12号、同法施行令 第4条)

このため、業者はリスク等に対する説明義務が課せられる。説明が尽くされておらず顧客が被害を蒙った場合は、業者は損害賠償責任を負うことになる。(同法 第3条1項2号、第4条)

金融先物取引法による規制

本取引は、かつては取引に関する法律(いわゆる「業法」)がなく規制もなかったために、多額の手数料を顧客から騙し取るといった悪徳業者が多発した。しかし、2005年7月1日金融先物取引法が改正されたことで以下の規制がかけられたことにより、悪質な業者は今後次第に淘汰されていくものと思われるが、過当競争状態になっている証券会社などでのトラブルや、本取引を騙っての詐欺事件が後を絶たない。

  • 業者は登録制となり、金融庁の監督下に置かれるようになった。
  • 以下の禁止行為が設けられた。
    • 不招請勧誘の禁止
    • 契約をしない旨の意思表示をした人に対する再勧誘の禁止
    • 断定的判断を提供しての勧誘の禁止
  • 広告規制
手数料やリスクなどについての表示を義務づけられた。
  • 書面の交付義務
契約締結前、取引成立、証拠金受領時にそれぞれ書面の交付が義務づけられた。
  • 外務員が登録制となった。

関連項目

外部リンク


【金融商品販売法】

(国民生活センターのホームページの「外国為替証拠金取引と不法行為責任」で検討、解説されている判例)