懲役

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懲役(ちょうえき)とは自由刑のひとつであり、受刑者を刑事施設に拘置して所定の作業を行わせる刑罰のことである(日本刑法12条2項を参照)。

日本においては自由刑として他に禁錮拘留が存在する。

懲役の目的

懲役刑の特色としては、以下の目的が挙げられる。

隔離
犯罪者を一定期間社会から隔離することにより社会の安寧を図る。また犯罪者を被害者による報復や社会の疎外から保護する。
抑止
長期間自由を奪うペナルティーを科すことにより、犯罪を割に合わないものとする。
矯正
強制労働という苦痛を与えることによって再犯防止を図るとともに、生活習慣などの健全化や職業訓練ともなるため社会復帰に役立っている。

日本の懲役

日本の現行刑法では、懲役は、有期懲役と無期懲役に分類され、有期懲役は原則として1ヶ月以上20年以下の期間が指定される。ただし、併合罪などにより刑を加重する場合には最長30年まで、減軽する場合は1ヶ月未満の期間を指定することができる(同法14条2項)。

したがって、ある条文において「2年以上の有期懲役に処する」と刑の短期のみが規定されている場合には、裁判所は、原則として「2年以上20年以下」(加重した場合や死刑・無期懲役を減軽した場合には30年以下)の範囲内で量刑を行うこととなる。

懲役刑の内容

懲役には炊事・洗濯など刑務所運営のための作業である経理作業と、財団法人矯正協会が国に材料を提供し靴・家具などを製作させたり、民間企業と刑務作業契約をして民間企業の製品を製作させたりする生産作業の2種類がある。

法律上、刑期の3分の1を経過することが仮釈放の期間的な条件となっており(刑法28条)、最短ではその期間の経過後に出所することもあり得るものとされているが、近年においては、刑期の長短にかかわらず、実際には受刑態度が良好な場合であっても、刑期の7割以上経過した後でなければ、仮釈放が認められない事例が多い。

なお、2011年(平成23年)版の犯罪白書によれば、2010年(平成22年)に刑務所から出所した者の内、仮釈放を許された者は49.1%、仮釈放を許されず満期まで服役した者並びに刑務所内で死亡(いわゆる獄死)した者は50.9%である。。

懲役の問題点

生産作業の中でも民間企業の製品を製作させる行為はILO条約が禁止する強制労働に当たるとの批判がある。ILO条約である「強制労働に関する条約」第4条では、権限ある機関が私人、会社、団体の利益のために強制労働を課したり、課すことを許可することを禁止したりしていることを理由とする。

諸外国では、民間企業の製品を製作させる行為は労働者の雇用を奪い、一般向けに製品を製作させる行為は民業圧迫になるとも考えられており、刑務作業で製作された製品は官庁向けに限定している国もある。

また、作業報奨金は作業を行った受刑者に対して、釈放の際にその時における報奨金計算額に相当する金額の作業報奨金を支給するものとされている。労働の対価とは考えられておらず、2008年度では1人当たり月平均約4200円となっている。これは刑罰の内容としての労働については対価という概念を想定し得ないことによるが、作業報奨金は出所直後の生活基盤となる資金でもあることから、矯正効果の向上や再犯防止の観点から増額を期待する意見もある。

刑務作業は景気の変動に左右されやすく、不況になると民間企業からの受注が減り、作業を満足に実施できないことがある。また、2003年平成15年)には高松刑務所で中国製の手袋を受刑者ラベルを張り替えさせて日本製と偽るという不祥事も発覚している。

短期の懲役刑(6ヶ月程度)では、受刑者に施設内処遇者というレッテルを貼られることによるデメリットが、懲役期間中の教育効果を上回るのではないかともいわれており、出所後の再犯率が高いことから教育刑としての効果が認められないのではないかとの指摘もある。また、雑居房で収容される刑務所が多いことから、犯罪者同士の交流を誘発(悪風感染)して教育上逆効果になると言う指摘もある。

元刑務官の坂本敏夫は 1965年ころ、受刑者が一般の工場で働く構外作業が廃止されたことを例に挙げ、責任回避のために事故を起こさないことが刑務官の目標となり、受刑者は技術を身につけることができず、社会復帰ができなくなったと指摘している。

仮釈放

仮釈放の許可基準

仮釈放が許可されるための条件については、刑法28条が「改悛の状があるとき」と規定しており、この「改悛の状があるとき」とは、単に反省の弁を述べているといった状態のみを指すわけではなく、法務省令である「犯罪をした者及び非行のある少年に対する社会内における処遇に関する規則」28条の基準を満たす状態を指すものとされており、そこでは「仮釈放を許す処分は、悔悟の情及び改善更生の意欲があり、再び犯罪をするおそれがなく、かつ、保護観察に付することが改善更生のために相当であると認めるときにするものとする。ただし、社会の感情がこれを是認すると認められないときは、この限りでない」と規定されている。

また、同規則18条では「仮釈放の審理にあたっては、犯罪又は非行の内容、動機及び原因並びにこれらについての審理対象者の認識及び心情、共犯者の状況、被害者等の状況、審理対象者の性格、経歴、心身の状況、家庭環境及び交友関係、矯正施設における処遇の経過及び審理対象者の生活態度、帰住予定地の生活環境、審理対象者に係る引受人の状況、釈放後の生活の計画、その他審理のために必要な事項」をそれぞれ調査すべき旨が規定されている。 ここで審理における調査事項のひとつされている「被害者等の状況」については、従来は必ずしも十分な調査が行なわれておらず、被害者側に意見表明の権利もない状況にあった。しかし、被害者保護の社会的要請(国民世論)の高まりを受け、2005年の更生保護法の成立を契機に、被害者が希望すれば仮釈放の審理の際に被害者側が口頭や書面で意見を述べることが可能となった。

仮釈放の判断過程

仮釈放は法務省管轄の地方更生保護委員会の審理によってなされ、そこで「許可相当」と判断された場合にはじめて実際の受刑者の仮釈放が行なわれるものであって、すべての受刑者に仮釈放の「可能性」はあっても、将来的な仮釈放が「保証」されているというわけではない。

無期懲役

概念

元来「無期懲役」とは、刑期に「期」限が「無」いこと、刑期の終わりが無い、つまり刑期が一生涯にわたること(受刑者が死亡するまでその刑を科すということ)を意味し、有期懲役より重い刑罰であり、死刑に次ぐものとされており、日本の刑法を英語で表現する場合も「Life(一生涯の) imprisonment(拘禁) with work」との語が充てられている。これは刑期、あるいは刑期の上限をあらかじめ定めない絶対的不定期刑とは異なり、不定期刑では刑がいつかは終了することが想定されているのに対し、無期懲役では刑が終了することは想定されていない。

ただし、現在の刑法28条では無期懲役の受刑者にも仮釈放(刑期の途中において一定の条件下で釈放する制度)によって社会に復帰できる可能性を認めており、同法の規定上10年を経過すればその可能性が認められる点で、現行法制度に存在する無期懲役は相対的無期刑であり、絶対的無期刑(重無期刑)とは異なる。仮釈放による社会復帰の可能性が全くない無期懲役は日本の法制度には存在しない。(下記も参照

在所受刑者数

2012年末現在、無期懲役が確定し刑事施設に拘禁されている者の総数は1826人である。

仮釈放中の処遇

日本では、仮釈放中の者は残りの刑の期間について保護観察に付される残刑期間主義が採られており、無期懲役の受刑者は、残りの刑期も無期であるから、仮釈放が認められた場合でも、恩赦などの措置がない限り、一生涯観察処分となり、定められた遵守事項を守らなかったり、犯罪を犯したりした場合には、仮釈放が取り消されて刑務所に戻されることとなる。ただし、少年のときに無期懲役の言渡しを受けた者については、仮釈放を許された後、それが取り消されることなく無事に10年を経過すれば、少年法59条の規定により刑は終了したものとされる考試期間主義が採られている。

仮釈放の運用状況

無期刑仮釈放者における刑事施設在所期間について、従前においては、十数年で仮釈放を許可された例が少なからず(特に1980年代までは相当数)存在したが、1990年代に入ったころから次第に運用状況に変化が見られた。

2003年以降では、仮釈放を許可され出所した者全員が20年を超える期間刑事施設に在所しており、それに伴って、仮釈放を許可された者における在所期間の平均も、1980年代までは15年-18年であったものの、1990年代から20年、23年と次第に伸長していき、2004年以降では、現在までのところ一貫して25年を超えるものとなっており、2004年が25年10月、2005年が27年2月、2006年が25年1月、2007年が31年10月、2008年が28年7月、2009年が30年2月、2010年が35年3月、2011年が35年2月、2012年が31年8月となっている。

また、本人の諸状況から、仮釈放が認められず、30年を超える期間刑事施設に在所し続けている受刑者や刑務所内で死を迎える受刑者も存在しており、2012年12月31日現在では刑事施設在所期間が30年以上となる者は127人、また2003年から2012年までの刑事施設内死亡者(いわゆる獄死者)は143人となっている。1985年の時点では刑事施設在所期間が30年以上の者は7人であったため、このことから、当時と比較して仮釈放可否の判断が慎重なものとなっていることがうかがえる。

風説

前述のように、現在の制度上、無期刑に処せられた者も、最短で10年を経過すれば仮釈放を許可することができる規定になっており、この規定と、過去において10数年で仮釈放を許可されたケースが実際に相当数存在していたこと、また仮釈放の運用状況が1990年代から次第に変化したものの最近になるまであまり公にされてこなかったことから、「無期刑に処された者でも、10年や10数年、または20年程度の服役ののちに仮釈放されることが通常である」といった風説が1990年代から2000年代において広まりを見せていった。しかし、このとき既に仮釈放の判断状況や許可者の在所期間などの運用は変化を示しており、そうした風説と現実の運用状況との乖離が高まったため、法務省は、2008年12月以降、無期刑受刑者の仮釈放の運用状況等について情報を公開するようになった。

また、同時に運用・審理の透明性の観点から、検察官の意見照会を義務化、複数の委員による面接、刑執行開始後30年を経過した時点において、必要的に仮釈放審理(刑事施設の長の申出によらない国の権限での仮釈放審理)の実施、および被害者意見聴取の義務化という4つの方針が採られることとなった。

ただ、その一方で、近年、無期刑受刑者における仮釈放について、困難性を強調しすぎる風説も見受けられる。たとえば、「千数百人の無期刑受刑者が存在するにもかかわらず、近年における仮釈放は年間数人であるから、仮釈放率は0%台であり、ほとんどの受刑者にとって仮釈放は絶望的である」「2005年の刑法改正で、有期刑の上限が20年から30年となったため、無期刑受刑者は仮釈放になるとしても30年以上の服役が必定である」といったものがそれである。

たしかに、2012年末時点において、1826人の無期刑受刑者が刑事施設に在所しており、同年における仮釈放者は6人であったが、近年無期刑の判決を受ける者自体が増加しており、そのため、その約50%にあたる903人は仮釈放が可能となる10年を経過していない者であり、これに現実に仮釈放の対象になりにくい20年を経過していない者を加えると全体の約75%にあたるため、これらの者(特に10年を経過していない者)を対象に加えるのは計算手法的に問題があり、また死亡や新規確定、年数経過による入れ替わりはあるものの、ある受刑者がその年に仮釈放とならなくても、その受刑者が生存する限りにおいて連続的に、仮釈放となる可能性は存し続けるため、単純な計算手法によって算定できる性質のものではないことを留意しなければならない。

また、刑法改正によって有期刑の上限が30年に引き上げられたといえども、仮釈放は無期刑・有期刑の区別にかかわらず存在しているため、現制度における懲役30年も絶対的な懲役30年ではなく、前述の規則28条の基準に適合すれば、30年の刑期満了以前に釈放することが可能であり、刑法の規定上はその3分の1にあたる10年を経過すれば仮釈放の可能性があることを留意しなければならない。仮に、重い刑の者は軽い刑の者より早く仮釈放になってはならないという論法を採れば、30年の有期刑は、29年の有期刑より重い刑であるから、29年未満で仮釈放になってはならないということになり、その場合、仮釈放制度そのものの適用が否定されてしまうからである。無期懲役と懲役30年の受刑者において、両者とも仮釈放が相当と認められる状況に至らなければ、前者は本人が死亡するまで、後者は30年刑事施設に収監されることになり、片方が矯正教育の結果仮釈放相当と判断され、もう片方はその状況に至らなければ、片方は相当と判断された時点において仮釈放され、もう片方は刑期が続く限り収監されることになるし、両者とも顕著な矯正教育の成果を早期に示せば、理論的にはともに10年で仮釈放が許可されることもありうるのであり、矯正教育の成果や経緯において場合によっては刑事施設の在所期間が逆転しうることは仮釈放制度の本旨に照らしてやむをえない面もある。もっとも、有期刑の受刑者については、過去では長期刑の者を中心として、刑期の6-8割あるいはそれ未満で仮釈放を許可された事例も相当数存在していたが、近年においては多くが刑期の8割以上の服役を経て仮釈放を許可されており、このことからも、当該状況の継続を前提とすれば、将来において、無期刑受刑者に対して過去のような仮釈放運用は行い難いという間接的影響は認められるが、それ以上の影響を有期刑の引き上げに根拠づけることは理論的に不十分といえる。

仮釈放のない無期懲役(重無期刑)の導入

議論と主張

無期懲役で服役し、その仮釈放中に強盗殺人や殺人、強盗傷害といった重大な犯罪に及ぶ事例があることや、現行刑法制度では、無期刑といえども仮釈放による出所の可能性が認められているため、その運用の如何にかかわらず、再犯の可能性自体を否定できないこと、さらにはその生命をもって罪を購う死刑に対して、社会復帰の可能性の有無という点でもギャップがあるということから、仮釈放制度のない無期懲役刑の導入の是非が議論されている。死刑には社会復帰の可能性はないが、現行刑法下における無期刑には社会復帰の可能性があるため、社会復帰のない無期懲役の導入すべきとの意見である。また、死刑を廃止した上で導入すべきとの主張もある。これに関連した動向としては、2003年に「死刑廃止を推進する議員連盟」によって、仮釈放のない重無期懲役刑および重無期禁錮刑を導入するとともに、死刑の執行を一定期間停止し、衆参両院に死刑制度調査会を設けることを趣旨とする「重無期刑の創設及び死刑制度調査会の設置等に関する法律案」が発表され、国会提出に向けた準備がなされたが、提出が断念された。しかし、2008年4月には同議連によって、再度「重無期刑の創設および死刑評決全員一致法案」が発表され、同5月には、同議連と死刑存続の立場から重無期刑の創設を目指す者とが共同して超党派の議員連盟「量刑制度を考える会」を立ち上げ、その創設に向けた準備を進めたが、国会議員の多数派の賛成は得られなかった。

報道による誤解

日本では新聞やテレビの報道で、仮釈放の可能性を認めず受刑者を一生涯拘禁するものをこれまで終身刑と表現し無期刑とは異なる別の刑と表現してきたが、刑法的には、無期刑と終身刑は別表現の同義語であり、その中には仮釈放の可能性のあるもの(相対的無期刑、相対的終身刑)とないもの(絶対的無期刑、絶対的終身刑)がある。新聞やテレビの報道が誤解している意味は、刑法や刑事訴訟法は冒頭で一般則を定め、その後に個別の条項を定めているのだが、刑罰の種類と、裁判で宣告された刑の執行に対する減免措置は、別個の独立した概念であり、特定の減免手段が特定の刑に所属するわけではない。つまり、仮釈放という減免手段が無期刑という固有の刑罰に所属しているわけではない。どの範囲の刑にどの減免措置を適用するかは個々の国の刑法刑事訴訟法受刑者の処遇に関する法律などが定めている。

実質的な包含

仮釈放の可能性がある無期刑(終身刑)と、仮釈放の可能性がない無期刑(終身刑)を比較すると、仮釈放を許可されなかった場合は結果として死ぬまで生涯にわたって収監されることになる。つまり、仮釈放の可能性がある無期刑(終身刑)は理論上も実際の運用上も、仮釈放の可能性がない無期刑(終身刑)の機能を含んでいる。逆側からみると、仮釈放の可能性がない無期刑(終身刑)の機能は仮釈放の可能性がある無期刑(終身刑)の部分集合なので、他の刑と比較して機能的に部分集合の刑を作るよりも、その刑の機能を包含する刑の運用において、包含する機能以外の機能を行使するかしないか判断すればいいので、機能的に他の刑の部分集合の刑を作り運用する合理的な理由がないということにもなる。

メリットとデメリット

仮釈放のない無期懲役のメリットとしては、再犯防止を保証できること、刑事施設において生涯罪を償うことが保証されていることがある。デメリットとしては、受刑者が自暴自棄になり人格が崩壊しやすくなるおそれがあること、受刑者が「一生出られない」という理由で開き直り、従順さを失って強圧的になるため管理が困難になることが挙げられている。

これをめぐっては、前述の効果を重視する立場の者から支持する意見が表明されている一方、死刑廃止派の一部から死刑と同様に人道上問題が大きいという意見が表明されているほか、死刑存置派の一部からも、「人を一生牢獄につなぐ刑は死刑よりも残虐な刑である」といった意見や、刑務所の秩序維持や収容費用といった面から、その現実性を疑問視する意見が表明されている。

受刑者が自暴自棄になり人格が破壊されるという主張について、仮釈放の可能性がある無期刑や30年の有期刑においても起こる可能性があり、仮釈放のない無期刑の場合のみこの点を殊更強調することは必ずしも適切ではないという見方もある。

諸国での法制

日本の報道では上記のように無期刑と終身刑は別の刑とし表現されてきた。すると、報道用語の「終身刑」を英語にすれば「Life imprisonment without parole」が充てがわれるべきであるが、日本の報道では、これまで「Life imprisonment」を直訳的に「終身刑」と翻訳してきたため、それが伝え広げられ、海外(特にヨーロッパ語圏)では、終身刑が一般的に採用されているとの風説が広まることにつながった。また、そのような中で、「Life imprisonment without parole」を直訳的に「仮釈放のない終身刑」と翻訳することと、海外の仮釈放などの情報を容易に取得できるようになった情報網の発達が相まって、海外には「仮釈放のある終身刑」という日本の無期刑とは「別概念」のものが存在するといった言説も拡大し、概念的な混乱は一段と広がることになった。

しかし、現実に海外の刑法典や仮釈放法典を見れば、「仮釈放の資格が認められる、最低の期間」は日本より長い場合が多いものの、比較的多数の国において、すべての無期刑の受刑者において仮釈放の可能性が認められており、たとえば、大韓民国刑法72条1項は10年、ドイツ刑法57条a、オーストリア刑法46条5項は15年、フランス刑法132-23条は18年、ルーマニア刑法55条1項は20年、ポーランド刑法78条3項、ロシア刑法79条5項、カナダ刑法745条1項、台湾刑法77条は25年、イタリア刑法176条は26年の経過によってそれぞれ仮釈放の可能性を認めている。一方で、中国や米国、オランダなどにおいては仮釈放のない無期刑制度が現に存在している。これら諸外国の状況について、法務省は国会答弁や比較法資料において、「諸外国を見ると仮釈放のない無期刑を採用している国は比較的少数にとどまっている」とかねてからしばし説明してきたが、この事実は現在でもあまり周知されていない状況にある。

展望

結局は、さまざまな論点について、緻密な検証と正確な認識の下で、国民世論や現場の意見にも注意を払いながら、多角的かつ十分な議論を行なった上で、社会的に妥当な刑罰政策を展開していくことが求められる。

執行猶予

原則として、3年以下の懲役刑を言い渡す場合においては、情状によって、その刑の執行を猶予することができる(執行猶予)。

そこで、しばしば実刑判決を必ずさせるための立法技術として、懲役刑の短期を5年ないし7年に設定する場合がある。特に、短期を7年とすると、法律上の減軽の適用が無い通常の事例において、酌量減軽(刑法66条)を適用しても短期が3年6月となるため、執行猶予を法律上適用することができなくなる。

短期を7年とした犯罪としては、強盗強姦罪がある(かつては、強盗致傷罪もそうであったが、酷であるとして刑法改正により短期が6年に引き下げられ、酌量減軽による執行猶予の余地を認めた)。

刑務所で製作された製品

刑務所において製作された製品は、「キャピック展」(「矯正展」とも呼ばれる)において展示即売がなされる(キャピックとは、「矯正協会刑務作業協力事業」―Correctional Association Prison Industry Co-operationの略である)。

科刑状況

懲役判決が確定した件数は次のとおりである。

  • 2002年 80,283件 (無期 82、有期実刑 30,951、執行猶予 49,250)
  • 2003年 85,017件 (無期 117、有期実刑 32,128、執行猶予 52,772)
  • 2004年 85,930件 (無期 115、有期実刑 32,959、執行猶予 52,856)
  • 2005年 85,154件 (無期 134、有期実刑 28,574、執行猶予 51,446)
  • 2006年 80,937件 (無期 135、有期実刑 33,717、執行猶予 47,085)
  • 2007年 74,486件 (無期 91、有期実刑 31,124、執行猶予 43,271)
  • 2008年 70,887件 (無期 57、有期実刑 29,617、執行猶予 41,213)
  • 2009年 68,631件 (無期 88、有期実刑 28,767、執行猶予 39,776)
  • 2010年 64,914件 (無期 49、有期実刑 27,623、執行猶予 37,242)
  • 2011年 59,898件 (無期 46、有期実刑 26,007、執行猶予 33,845)
  • 2012年 58,253件 (無期 38、有期実刑 25,360、執行猶予 32,855)
  • 2013年 52,763件 (無期 38、有期実刑 23,262、執行猶予 29,463)

2000年代前半と比べて近年は、合計件数で7割程度に減少している。

参考文献

  • 森下忠「刑事政策大綱 新版第2版」成文堂、1996年7月。ISBN 4-7923-1411-9
  • 森下忠「刑事政策の論点Ⅱ」成文堂、1994年09月01日。ISBN 9784792313456

関連項目

外部リンク