書道

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書道(しょどう)または(しょ)とは、書くことで文字を表そうとする東洋の造形芸術である。カリグラフィーの一種。中国が起源であるが、日本においては漢字から派生した仮名ベトナムではチュノムなどが発明されると共にそれぞれ独自の書風が作られている。

概説[編集]

文字ははじめ実用として生まれたが、文化の進展につれ美的に表現する方法が生まれた。この美化された文字を書という。書道とは、この文字の美的表現法を規格あるしつけのもとに学習しながら、実用として生活を美化し、また趣味として心を豊かにし、個性美を表現していくことである。そして、その学習過程において、人格を練磨し、情操を醇化していく。よって、書道は人間修養の一方法であり、古来、中国では六芸の一つとして尊崇されてきた[1]

書道は主に毛筆を使い、その特徴を生かしての上に文字を書く。その技法(書法)には、筆法間架結構法布置章法があり、それぞれに様々な方法が編み出され、書体や書風などによって使い分けられている。

日本では昭和時代からの大規模な書道展の開催により、書道が近代芸術としての地位を確立したことから、その芸術作品としての創作方法も書の技法に加わった。これらの技法の習得には、色々な教育機関を通じて書家に師事し、古典を中心に学習し、書道展などに出品しながら技量を高めていくのが一般的である。日本の代表的な展覧会である日展の第五科(書)では、漢字かな篆刻調和体の4領域が実施されている。

歴史[編集]

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『本能寺切』(部分)藤原行成
詳細は 中国の書道史 を参照

書道史は美術に関する史学の一部門であり、本源である中国書道史と、傍系である日本書道史の2つに大別することができる[1]

書人[編集]

中国
詳細は 中国の書家一覧 を参照
日本
詳細は 日本の書家一覧 を参照

筆跡[編集]

中国の筆跡は中国の筆跡一覧を、日本の筆跡は日本の書道史の各時代を参照のこと。

書論[編集]

現存する中国最古の書論は、後漢時代に著された趙壱の『非草書』である(中国の書道史#書論を参照)。日本最古の書論は、平安時代後期(1177年以前)に著された藤原伊行の『夜鶴庭訓抄』(やかくていきんしょう)とされる。また藤原教長の口伝を藤原伊経が記録した書道秘伝書『才葉抄』(さいようしょう、『筆躰抄』(ひったいしょう)ともいう)も安元3年(1177年)頃のものである。

基本[編集]

用具[編集]

毛筆による書道の場合、が最低限必要な用具であり、これらは文房四宝と呼ばれる。墨が固形の場合、も必要となる。このほか、毛氈と呼ばれる下敷きも多用される。

  • …絵画におけるパレットと用途は同じである。墨を磨る、或いは墨汁をためておく役割を果たす。通常、石材が用いられるが、中には陶器や漆器などで出来たものもある。
  • などの動物の毛をまとめての柄の先に取り付けたものが一般的である。ほかに、マングース孔雀などもある。楷書用の大筆は八分目までおろし、行草用は根本までおろして使うのが良いとされる。小筆は半分以上おろさない方がよい。
  • …大量生産された書道用紙が多く用いられるが、高級なものでは宣紙和紙なども使用される。
  • …インクである。植物油石油などので固め、保存性を高めたものが市販されている。煤を植物油や石油から採ったものを「油煙墨」、松から採ったものを「松煙墨」という。また、液体として墨汁も多用される。
  • 文鎮…紙を固定するための重りである。大きさや重さに特に制限はない。

古典[編集]

書の古典とは、先人たちの努力と創意の積み重ねにより生まれた美しい筆跡であり、この古典を学ぶことが最も正統な書の学習とされる。書を究めることは容易ではないが、古典を学び先人たちの書とその変遷を知ることにより、学書者に指針を与え、さらに作品の深さや心の高さなど、独りでは到底到達できない境地まで引き上げる効果が期待できる。古典は数多くあるが、最初に学習すべき各書体の基本的な古典は通常以下のものとされる。

臨書[編集]

手本を見ながら書くことを臨書(りんしょ)といい、形臨けいりん)、意臨いりん)、背臨はいりん)の方法がある。形臨は字形を真似することに重点を置き、意臨は筆意(ひつい、筆者の意図)を汲みとることに重点を置く。背臨は手本を記憶した後、手本を見ないで記憶を頼りに書く方法である。臨書は古典などの学習手段として古来から行われており、奈良時代光明皇后による王羲之の『楽毅論』の臨書が正倉院に現存する。
臨書に対し、他人の書を参考にしないで、自分で創意工夫して書くことを自運(じうん)という[2]

技法[編集]

詳細は 書法 を参照

学校教育[編集]

中国[編集]

中国では書法(Shūfǎ しょほう)と呼ばれ、初等教育で指導される。簡体字が視覚的に美しくないということで繁体字での書道教育も模索された時期があるものの、政策としての簡体字推進に矛盾することから現在は簡体字の指導で統一される。硬筆ボールペンなどの書道教育も試みられている。また、中国各地に書法協会が存在し、公教育から離れた立場で書道の発展に貢献している。

日本[編集]

書道学科(専攻・コース等)を設置している日本の国公立大学[3](ゼミを除く)
  • 北海道教育大学岩見沢校 教育学部 芸術課程 美術コース 書専攻
  • 岩手大学 教育学部 学校教員養成課程 小学校教育コース(書道サブコース)・中学校教育コース国語科(書道)
  • 岩手大学 教育学部 芸術文化課程 造形コース(書道)
  • 新潟大学 教育学部 芸術環境創造課程 書表現コース
  • 筑波大学 芸術専門学群 美術専攻 書コース
  • 東京学芸大学 教育学部 教育系 中等教育教員養成課程(B類) 書道専攻
  • 東京学芸大学 教育学部 教養系 芸術文化課程(G類) 書道専攻
  • 静岡大学 教育学部 芸術文化課程 書文化専攻
  • 京都教育大学 教育学部 美術領域専攻(書道分野)
  • 奈良教育大学 教育学部 総合教育課程 文化財・書道芸術コース 書道芸術専修
  • 大阪教育大学 教育学部 中学校教員養成課程 美術・書道専攻
  • 福岡教育大学 教育学部 中等教育教員養成課程/教科コース 書道専攻
  • 福岡教育大学 教育学部 生涯スポーツ芸術課程/芸術コース 書美領域
書道学科(専攻・コース等)を設置している日本の私立大学[3](ゼミを除く)
書道科(専攻・コース等)を設置している日本の高等学校(選択科目としてのコースを除く)
書道を専門に学ぶ日本の専門学校・専修学校[4]

書道研究[編集]

現在、日本には書道、および文字にかかわる学会・研究会として次のものがある。

書道団体[編集]

日本の書道団体[編集]

芸術系の書道団体教育系の書道団体があり、芸術系では日展が全国的な公募展を行っている。このほか、地方・都道府県単位で組織する書作家協会や、書家が主宰する様々な会(社中とも呼ばれる)がある。教育系団体は独自の検定試験などを行い、書道の普及活動に努めている。

主な芸術系団体

主な教育系団体

職業としての書道[編集]

日本では昔から「読み書きソロバン」として、寺子屋などで習字が指導されてきた。この伝統の下、多くの書道教室・習字教室が存在している。指導者は高齢化の傾向にあったが近年、若手の男性書家がテレビ番組や若者向き雑誌に登場するなど、やや様変わりしてきた。 コンピュータの発達とともに、コンピュータを使って書作品を加工したりする敷居が下がるのと時を同じくして、デザイン書道と呼ばれるジャンルが確立してきた。これは書作品を生活雑貨やインテリア、表札などの多様なものにコンピュータ処理などを経てデザインしていくもので、書にまつわる新しい職業として注目されている。

技量の判定[編集]

現在、唯一客観的な書道の技量判定基準を持つ資格として、文部科学省後援の毛筆書写検定がある。これは最下位の5級から最上位の1級まであり、段位の認定はない。1級を取得すると、指導者として公的に認められる資格を持つと認定される。これに対して一般に普及している段位・級位や師範の認定は、各書道教室や書道会が独自に判定しており、共通した基準に基づくものではない。

脚注[編集]

  1. 1.0 1.1 藤原鶴来(緒論)
  2. 書道辞典 P.57
  3. 3.0 3.1 書道学科(専攻・コース等)の定義:書道についての実技試験・個別試験を特に課すもの。国語・人文学系などと同じ受験方法で入学した後、学内の選考・希望で割り振られるものでないこと。
  4. 専門学校・専修学校の定義:学校教育法第126条を満たし、文部科学大臣に認定された教育課程を持ち、文部科学省に認可された教育機関。書道教育団体や書道教室等の組織が独自に師範等の養成を行う教育機関はここに含まない。(専門学校,専修学校の項を参照)

参考文献[編集]

関連項目[編集]

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